最近の火災動向と地震火災への備え
災害としての火災の特徴
火災とは、消火の必要がある燃焼または爆発現象であり、消火設備などを用いた対応が必要となるものを指します。
燃焼が起こるためには、
- 熱(火種)
- 可燃物
- 酸素
の3つがそろう必要があり、これを「燃焼の三要素」と呼びます。
さらに、燃焼が連続して続く仕組み(連鎖反応)を加えた考え方を、「燃焼の四要素」と呼ぶこともあります。
火災は、地震や台風などの自然災害と比べると、大きく異なる特徴を持っています。
それは、人の行動と自然現象の両方が関係する「複合要素災害」であるという点です。
自然発火による林野火災や、地震に伴って発生する地震火災のように自然現象に起因する火災もありますが、火災原因の多くは、日常生活や業務の中での人為的な行動(故意・過失)によって引き起こされています。
このため、火災は他の災害以上に、「発生させないための事前対策」が重視されてきました。
日本では、戦後に発生した多くの大規模建物火災の教訓を踏まえ、消防法を中心とした火災予防対策が整備されてきました。
その結果、火災の発生件数や被害は、長期的に見ると減少傾向にあります。
日本で発生する火災の多くは建物火災であり、特に住宅火災とその死者数が大きな割合を占めています。一方で、林野火災は件数こそ少ないものの、ひとたび発生すると被害が広範囲に及び、住民の避難やヘリコプターによる大規模な消火活動が必要となる場合があります。
近年では、2024年1月に広島県江田島市、同年6月に山形県南陽市で大規模な林野火災が発生しており、改めて注意が必要となっています。
地震火災
関東大震災や阪神・淡路大震災では、地震発生後に十分な消火活動が行えなかったことから、市街地を巻き込む大規模な地震火災が発生し、甚大な被害が生じました。
また、2016年12月の新潟県糸魚川市の大規模火災では、強風の影響により被害が急速に拡大したことが知られています。
今後も、大規模地震の発生に伴い、同様の地震火災が起こる可能性は否定できません。
特に強風時には延焼が拡大しやすく、一人ひとりの事前の備えが被害の大きさを左右します。
(1)事前の出火防止対策
地震火災を防ぐためには、まず「火を出さない」ことが重要です。
建物の耐震対策や家具の転倒防止、消火器の設置、感震ブレーカーの導入などが有効とされています。
また、地震時に安全機能が働く暖房機器の使用や、Siセンサー付きコンロの利用、器具周辺の整理整頓も出火防止につながります。
地震直後には、電気コードや石油暖房機器に損傷がないか、灯油の漏れがないかを確認することが大切です。
避難する際には、可能であればブレーカーを落とし、避難後に自宅へ戻った際も、ガスや電気機器に異常がないことを確認してから使用する必要があります。
【通電火災・電気火災】
阪神・淡路大震災では、停電復旧後に多くの通電火災が発生しました。
東日本大震災でも、電気関係の出火が火災原因の多くを占めています。
感震ブレーカーには、分電盤タイプや簡易タイプ、コンセントタイプなどがあり、住宅の状況に応じて選択できます。
日常的に、使用していない電気製品のプラグを抜いておくことも、有効な対策のひとつです。
(2)早期発見と初期消火
地震後に火災が発生しても、早期に発見し初期消火ができれば、被害の拡大を防ぐことができます。
そのため、連動型住宅用火災警報器や住宅用消火器の設置が重要です。
さらに、屋外警報装置を設置することで、近隣住民に火災の発生を知らせ、早期対応につなげることも期待されます。
(3)地域ぐるみの防災対策
大規模地震時には、消防や救急への要請が集中し、地域全体での対応が求められる状況になる可能性が高くなります。
平時からハザードマップを確認し、避難経路や消火器の設置場所を把握しておくこと、地域での防災訓練を通じて役割分担を確認しておくことが、被害軽減につながります。
コラム
火災旋風(かさいせんぷう)
火災旋風とは、大規模な火災が発生した際に、強い上昇気流と周囲の風が組み合わさって発生する、渦を巻いた激しい風のことです。
巨大な炎が空気を急激に温めることで、熱せられた空気が上昇し、その周囲から空気が流れ込むことで発生すると考えられています。
火災旋風が起こると、炎や火の粉が渦に巻き上げられ、周囲に一気に延焼するおそれがあります。
また、非常に強い風を伴うため、建物の倒壊や避難行動が困難になるなど、被害が拡大しやすいのが特徴です。
放火により多数の死者を出した建物火災(京都アニ放火火災)
2019年に発生した京都アニメーションの放火火災は、建物内で放火が行われ、多数の死者が出る深刻な建物火災となりました。
可燃性の高い液体が使用されたことで、短時間のうちに火と煙が建物内に広がったことが特徴です。
建物火災では、炎そのものだけでなく、煙や有毒ガスによる被害が大きくなりやすいことが知られています。
この火災をきっかけに、防火対策や避難計画、非常時の対応の重要性が改めて認識されるようになりました。
輪島市大規模火災
2024年の能登半島地震では、石川県輪島市において大規模な火災が発生しました。
地震による建物被害やインフラの障害が重なる中で、火災の延焼が続いたことが特徴です。
地震後の火災では、
- 消火活動が困難になる
- 道路の寸断により消防車が近づけない
- 水道の断水により十分な放水ができない
といった問題が同時に発生しやすくなります。
この火災は、地震への備えと同時に、地震後の火災を想定した備えも重要であることを示した事例といえます。