都市ガスとLPガス|災害時の違いと復旧

都市ガス

都市ガスの防災の基本

都市ガスは、多くの導管が地中に埋設された供給網によって、各家庭へ届けられています。地震時には地盤変動の影響を受ける可能性があるため、供給設備の防災対策は重要な課題となっています。

都市ガス分野では、災害対策を「予防」「緊急対応」「復旧」の三段階で整理して取り組んでいます。これは、エネルギー供給の安全確保と早期復旧を両立させるための基本的な考え方です。

① 予防対策

ガス導管の新設や更新では、地震時の被害を最小限に抑える為耐震性の高い材料が使用されます。代表的なものとして溶接接合鋼管やポリエチレン管があり、阪神・淡路大震災クラス(震度7)の揺れにも耐える性能を持つ導管が採用されています。インフラの耐震化は、災害後の復旧速度を左右する重要な要素でもあります。

② 緊急対応

大きな地震によりガス供給網に被害が生じた場合、二次災害を防ぐため、対象地域のガス供給は速やかに停止されます。一方、設備の安全が確認された地域では供給を継続し、社会機能の維持が図られます。

③ 復旧

供給停止地域では、安全確認を行ったうえで復旧作業が進められます。都市ガス業界では、災害時に全国の事業者が相互に応援する体制が整えられており、大規模災害時には短期間で支援体制が構築されます。

地震時の都市ガス供給の仕組み

地震発生時には、家庭単位の停止と地域単位の停止という二つの仕組みが働きます。

① 家庭単位での供給停止

各家庭にはマイコンメーター(保安機能付きガスメーター)が設置されています。
このメーターには感震装置が組み込まれており、震度5程度以上の揺れを感知すると自動的にガス供給を遮断します。ガス供給が継続している地域であれば、ガス漏れなどの異常がないことを確認したうえで、簡単な操作により再びガスを使用できる場合があります。

② 地域単位での供給停止

都市ガスの導管は広い地域で網状に接続されているため、供給区域は一定規模のブロックに区分されています。地震時にはブロックごとに被害状況を確認し、供給停止や継続の判断が行われます。一部地域では、圧力調整設備(ガバナー)に設置されたSIセンサーが震度6弱以上の揺れを検知すると、自動的に供給を停止する感震自動遮断システムが導入されています。この仕組みがない地域では、地震計の観測結果を基に、遠隔操作などで供給停止が行われます。

都市ガス供給の復旧

① 復旧の進め方

供給停止地域では、ガス漏れの有無を確認したうえで供給再開が行われます。漏れがある状態で供給を再開すると火災や爆発の危険があるため、安全確認は不可欠です。ガス導管の多くは道路下に埋設されているため、漏れが確認された場合には道路掘削などが必要となり、復旧には一定の時間を要します。
また、被害地域は復旧ブロックと呼ばれる細かな区域に分けられ、順次点検と復旧作業が進められます。そのため、隣接地域でも復旧時期が異なる場合があります。

② 復旧の優先順位

復旧作業は、安全確保と効率の観点から、被害が比較的軽い地域から進められます。また、ガスの流れの上流側から順に復旧することで、供給回復を効率化します。病院や避難所など公共性の高い施設では、移動式ガス発生設備などによる臨時供給が行われることもあります。

③ 情報提供

復旧状況は刻々と変化するため、ガス会社はテレビ・ラジオ・広報車・ホームページなどを通じて、供給停止区域や復旧状況を公表します。災害時には、これらの情報を確認することが重要です。

地震時の行動

① ガスを使用していた場合

火の近くにいる場合は、可能な範囲で火を消します。ただし、強い揺れの最中に無理に火を消そうとするのは危険なため、揺れが収まった後に器具栓や元栓を閉めます。

② ガスのにおいがする場合

ガス臭を感じた場合は、次の行動をとります。

・ガス栓を閉める
・窓や戸を開けて換気する
・屋外へ避難する
・ガス会社へ連絡する

このとき、電灯や換気扇のスイッチは絶対に入れてはいけません。スイッチの火花がガスに引火する可能性があります。たばこの火も危険です。

③ 揺れがおさまった後の確認

次の点を確認します。

・ガス臭がないか
・ガス機器や排気設備に破損がないか
・接続部分が外れていないか

異常がなければ、ガス栓を開けて使用できる場合があります。

④ ガスが使えない場合

ガスが出ない場合は、供給が停止している可能性があります。ガスメーターの赤ランプが点滅している場合は、マイコンメーターが供給を遮断しています。その場合はメーターの復帰操作を行います。復帰しても使用できない場合は、地域全体で供給が停止している可能性があるため、報道や広報情報を確認します。

平常時からの備え

災害時に慌てないため、日頃から次の点を確認しておくことが大切です。

・ガスメーターの設置場所
・マイコンメーターの復帰方法
・ガス栓や元栓の位置

集合住宅では、複数のメーターがまとめて設置されている場合があるため、自宅のメーターの位置を把握しておくと安心です。

また、ガス機器の周囲には燃えやすい物を置かないようにすることも重要です。

比較項目 都市ガス LPガス
供給方式 地下導管(ネットワーク型) 個別ボンベ(分散型)
災害時の強み 二次災害を防ぐ一括遮断 復旧が早く「最後の砦」
復旧の目安 数週間〜1ヶ月(安全確認後) 非常に早い(点検後すぐ)

LPガス

LPガスの特徴(分散型エネルギー)

LPガスは、都市ガスのようなパイプラインではなく、住宅や施設に設置された LPガス容器(ボンベ) や バルク貯槽 から個別に供給される仕組みです。この分散型の供給方式により、都市ガスのように地域全体で供給が停止する可能性は比較的低く、災害時にも利用できるエネルギーとされています。エネルギー基本計画では、LPガスは 「災害時エネルギー供給の最後の砦」 と位置づけられています。

ただし、利用状況は各家庭の被災状況に左右されます。
新潟県中越沖地震では、全面復旧まで約1週間を要しましたが、直後から利用できた家庭も多くありました。災害に比較的強いエネルギーであることが確認されています。

災害時には、まず需要家自身が復帰操作を行い、復帰できない場合は地域のLPガス販売店が点検する流れとなります。

災害時の安全対策

(1)LPガスマイコンメーター

LPガスマイコンメーターは、ガス使用量の計測だけでなく、安全管理機能を持つ 保安ガスメーター です。ガス流量や圧力の異常を監視しており、危険と判断した場合には自動的にガス供給を遮断します。また、震度5相当以上の揺れを感知した場合にも、ガスを自動停止します。

遮断された場合は復帰ボタンで再開できますが、配管や機器に異常がある場合は再び遮断され、安全が確保される仕組みです。

(2)個別点検

LPガス事業者は、メーターが遮断された家庭のうち、ガス漏れの可能性がある需要家を優先して点検します。点検では安全確認と必要な措置を行い、二次災害の防止を図ります。

(3)避難所での活用

近年は、避難所でLPガスを活用する取り組みも進められています。学校体育館などにLPガス設備を導入することで、非常用発電機や GHP(ガスヒートポンプ) により電力や冷暖房の確保が可能になります。さらに、炊き出し用コンロや簡易シャワーなど、避難生活を支える用途としても利用されています。

地域防災との連携

各都道府県のLPガス協会は、災害時に迅速に対策本部を設置できる体制を整えています。
また、47都道府県との間で 災害時LPガス供給協定 が締結されており、支援体制が確立されています。全国約 1万7,000 のLPガス事業者が地域の防災活動にも参加しており、防災学習会への協力や防災士資格取得の推進など、地域防災との連携も進められています。

4 災害時の行動

(1)平常時の確認

・容器やガスメーター周辺を整理する
・容器バルブの閉め方(右回し)を確認する
・集合住宅ではメーターバルブの位置を把握する
・容器がチェーンなどで固定されているか確認する
・落下物になりやすい物を周囲に置かない

固定が不十分な場合は、LPガス事業者へ相談します。

(2)災害時の対応

地震時
・揺れがおさまってから器具栓や元栓を閉める
・揺れが大きい場合は容器バルブも閉める

・ガス臭がある場合は、すべてのバルブを閉め、LPガス販売店へ連絡します。

🚫 ガス臭いとき「絶対にやってはいけない」こと
電灯・換気扇のスイッチ操作

※小さな火花でも引火・爆発の原因になります。ONの状態ならそのまま、OFFの状態なら触らないのが鉄則です。

たばこの火・ライターの使用
電話(固定・携帯)の使用

※ガス臭い室内での通話は控え、必ず屋外へ出てから連絡してください。

火災時
・容器バルブを閉め、消防隊に容器の位置を知らせます。

台風・洪水時
・容器バルブを閉め、容器の固定状態を確認します。
・浸水のおそれがある地域では、チェーンを二重にするなどの対策が望まれます。

まとめ

・都市ガスは導管ネットワーク型のエネルギーであり、予防・緊急対応・復旧の三段階で防災対策が進められている。
・地震時には家庭単位(マイコンメーター)と地域単位(ブロック停止)の二重の安全装置が働く。
・LPガスは分散型エネルギーであり、地域全体の供給停止が起こりにくい特徴がある。
・LPガスもマイコンメーターによる自動遮断など、安全確保の仕組みが整備されている。
・災害時の安全確保には、日頃からメーターやバルブの位置、操作方法を確認しておくことが重要である。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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