地震への事前の備え
1 家族防災会議
災害時の行動や連絡方法など、家庭ごとの対応をあらかじめ決めておくことは重要である。そのため、家族全員で話し合い、「災害時のわが家のルール」を共有しておくことが望ましい。
ただし、家族構成や生活環境は時間とともに変化するため、一度決めただけでは十分とはいえない。少なくとも年に一度は家族防災会議を開き、内容を確認し直すことが大切である。継続的な見直しが、実際に機能する備えにつながる。
(1)家族防災会議で話し合う内容
家族防災会議では、次のような内容を確認しておくとよい。
① ハザードマップや被害想定を確認し、地域の災害リスクを把握する
② 自宅内の危険箇所や安全な場所を確認する
③ 避難場所や避難所までの経路を、昼間と夜間それぞれ実際に歩いて確認する
④ 家庭内の備蓄品(食品や薬の期限など)と保管場所を確認する
⑤ 非常持ち出し品を準備する(季節や家族構成によって内容が変わることに注意する)
⑥ 消火用品や防災資機材の準備状況を確認する
⑦ 災害時の対応を確認する(高齢者がいる家庭では、避難方法、ガス栓やブレーカーの操作など)
⑧ 家族の連絡方法を確認する
安否確認の手段としては、次のような方法がある。
【安否確認の手段と実践ポイント】
- 災害用伝言ダイヤル(171): 「イナイ(171)」と覚えます。毎月1日と15日、および防災週間などは体験利用が可能です。家族全員で一度「録音・再生」を練習しておくことが、本番での迷いをなくします。
- 災害用伝言板(携帯各社): 震度6弱以上の地震発生時に開設されます。スマホのホーム画面にショートカットを作成しておくと迅速にアクセスできます。
- SNS(LINE・X等): 電話回線がつながらない場合でも、パケット通信は生きてることが多いため有効です。ただし、バッテリー消費を抑えるため「位置情報の送信」など最小限のやり取りに留めるルールを共有しましょう。
さらに、被災地から離れた親戚などの家を、連絡の中継地点(集合連絡先)として決めておく方法も有効である。
2 防災用品
防災用品は、想定する災害が増えるほど必要なものも多くなるため、すべてを備えることは現実的ではありません。 大切なのは、**「誰が、いつ、何の目的で使うか」**を整理し、自分たちに必要なものを優先順位をつけて準備することです。防災用品は大きく以下の3つのステージで考えましょう。
■ ステージ1:自助(個人の備え)
命を守り、自力で避難・生活するための備えです。家族構成(乳幼児、高齢者、ペットの有無など)に合わせて「わが家専用」のセットを用意します。
- 非常持ち出し品: 避難時に持ち出す最小限のセット(リュック1つ分)。
- 家庭備蓄: 自宅で数日間過ごすための食品や簡易トイレ(最低3日〜1週間分)。
■ ステージ2:共助(地域・組織の備え)
救助活動や避難所運営など、個人では所有や管理が難しい機材を「自主防災組織」などで共有します。
- 防災資機材: ジャッキ、担架、発電機、大型テントなど。
- 活用ポイント: これらの機材は、祭りや盆踊り、餅つきなどの地域活動で普段から使用し、いざという時に誰もが扱える状態にしておくことが望ましいです。
■ ステージ3:フェーズフリー(日常と災害の境界をなくす)
「防災専用」としてしまい込むのではなく、日常生活の中で使い慣れているものを災害時にも役立てる考え方です。
- キャンプ道具の活用: 寝袋、ランタン、ポータブル電源などは、普段のレジャーで使い慣れることで、災害時の心理的な負担を軽減します。
- ローリングストック: 普段食べている食品を多めに買い、古いものから消費して買い足すサイクルを回します。
3 地震への備え
地震は、いつどこで発生するか分からない。また、確実に助かる方法というものも存在しない。
まず重要なのは、建物の安全性を高めるなどして「命を守る」「けがを防ぐ」環境を整えることである。そして、地震が発生した際には、その場の状況に応じて適切に行動し、命を守ることが何より重要となる。
命を守ることができなければ、地震後の備えがどれだけ整っていても意味を持たない。
(1)建物の安全性を高める
阪神・淡路大震災では、犠牲者の8割以上が建物の倒壊や家具の転倒による窒息死・圧死であった。
建物の倒壊は、命を守れるかどうかに大きな影響を与える。
また、建物の倒壊は次のような被害の拡大にもつながる。
火災が発生しやすくなる
道路をふさぎ、救援活動の妨げになる
避難生活が長期化し、復旧・復興が遅れる
このように、建物の安全性を高めることは、地震対策の基本である。
(2)家具類の転倒・落下・移動防止対策
大きな地震が発生した際、固定されていない家具は凶器へと変わります。重い家具が胸部を圧迫すれば、瞬時に窒息や圧死を招く危険があるほか、避難経路を塞いで逃げ遅れの原因にもなります。
■ 想像を超える「家具・家電」の動き
地震の被害は、単に家具が「倒れる」だけではありません。平常時には想像しにくい以下のような状況が発生します。
- 落下: 食器棚から割れ物が降り注ぎ、室内にガラスが散乱して素足で歩けなくなる。
- 移動: ピアノなどの大型家具が床を滑り、人や壁を押しつぶす。
- 飛散: テレビや電子レンジなどの家電が「飛んで」くる。
■ 負傷原因の約半数は「家具類」
東京消防庁の調査(2003年〜2016年の大規模地震)によると、負傷者の約30〜50%が家具類の転倒・落下が原因であることが判明しています。つまり、家具を固定するだけで、怪我のリスクを劇的に下げることが可能です。
■ 対策の現状(東京消防庁 2023年度調査)
現在の一般家庭における対策実施率は以下の通りです。
「一部のみ」という世帯が半数を超えていますが、命を守るためには、寝室やリビングなど長時間過ごす場所の家具から「完全な固定」を目指すことが重要です。
(3)地震後の「時間差」の脅威:電気火災対策
地震の揺れが収まり、ほっと胸をなでおろした数時間後。避難して無人になった家で、倒れた電気ストーブに電力が再供給され、火を噴く――。これが「通電火災」です。
阪神・淡路大震災の火災原因の約6割、東日本大震災(津波起因を除く)でも過半数がこの電気関係でした。揺れから逃げ延びた後の「時間差の脅威」を防ぐため、物理的に電気を遮断する対策が不可欠です。
■ 自動で命を守る「感震ブレーカー」
感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知すると自動的に電気を遮断する装置です。特に、外出中や、パニックでブレーカーを落とさず避難してしまった場合に極めて有効な対策となります。
■ 感震ブレーカーの種類と選び方
設置場所や予算に合わせて、主に以下の3つのタイプから選択します。
■ 夜間の避難に備えるセット対策
感震ブレーカーは火災防止に有効ですが、夜間に作動すると家の中が瞬時に暗闇になり、避難を妨げるリスクがあります。導入の際は、以下の備えをセットで行いましょう。
- 自動点灯ライト: 揺れを感知して自動点灯する足元灯を設置する。
- 懐中電灯: 枕元に必ず懐中電灯を準備し、暗闇でも動けるようにする。
- 生命維持装置への配慮: 医療機器を使用している場合は、必ずバッテリー等の停電対策を併用してください。
まとめ
地震への備えでは、まず家庭内で行動や連絡方法を共有しておくことが重要である。家族防災会議を通じて、地域の災害リスクや避難方法、備蓄の状況などを定期的に確認しておくことが望ましい。
また、防災用品は目的や家庭の状況に応じて準備し、日常生活の中で使い慣れておくことが大切である。
さらに、命を守るための基本的な対策として、建物の安全性を高めることや家具の転倒防止、電気火災対策などを進めておく必要がある。これらの備えは、被害を減らし、安全な避難につなげるための重要な基盤となる。
※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください
※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。
