災害対策の時系列と災害救助法の仕組み

災害対策の時系列と災害救助法

災害対策の時系列

災害対策は、一般に「予防」「応急」「復旧・復興」という時間の流れで整理される。これは防災対応サイクルとも呼ばれ、災害対策基本法や防災基本計画でも採用されている基本的な考え方である。

「予防」は、過去の災害から得られた教訓を踏まえ、被害の発生をできるだけ防ぐために事前に備える段階である。具体的には、食料や飲料水、医薬品の備蓄、建物の耐震化などが挙げられる。

「応急」は、災害が発生した直後に行われる緊急的な対応を指す。炊き出しによる食事の提供、負傷者への応急手当、仮設住宅や仮設橋の設置などがこれに含まれる。

「復旧・復興」は、被害を受けた生活や社会基盤を回復させていく段階である。負傷者の本格的な治療、住宅の修理や再建、電気・水道などのライフラインの復旧などが行われる。

阪神・淡路大震災を契機に、「復旧」と「復興」を区別して考える必要性が強く認識されるようになった。

一般に「復旧」は、被災前の状態に戻すことを目標とする「原型復旧」の考え方を指す。一方、「復興」は単に元に戻すのではなく、新しい価値や仕組みを取り入れて地域を再生するという意味を含む。

例えば、家族を失った世帯では従来の生活に戻ることが難しく、新しい生活の形を模索する必要が生じる。また、地域産業の転換や都市環境の再整備なども復興の取り組みに含まれる。

町工場が共同で新たな製造業へ転換する、道路整備とあわせて植栽帯を設ける、電柱を地下化する、河川護岸を親水性のある構造に改修するなどの事例も、復興の考え方に位置付けられる。

阪神・淡路大震災以降、原型復旧だけでは十分ではないという認識が広がり、「復興」を重視する議論が進められるようになった。

その後、東日本大震災の経験を踏まえ、2011年には東日本大震災復興基本法が制定された。さらに2013年には「大規模災害からの復興に関する法律」が制定され、復興政策の基本的な枠組みが整備された。

この法律では、「生活の再建および経済の復興を図り、将来にわたって安全な地域づくりを推進すること」が基本理念として示されている。ただし、制度の中心は復興事業を進めるための手続きの簡素化などであり、東日本大震災で行われた生業(なりわい)復興などの特別措置は含まれていない。

防災対応サイクルの流れ
1. 予防(平常時)

備蓄、耐震化、ハザードマップ作成など、被害を最小限に抑える準備。

2. 応急(発災直後)

救助、炊き出し、避難所運営。災害救助法が主に適用される段階。

3. 復旧・復興(その後)
復旧:壊れたものを元の状態に戻す(原型復旧)。
復興:新しい価値を加え地域を再生する(創造的復興)。

災害救助法

1 災害救助法制定の背景と前史

日本の被災者救助には長い歴史があります。その起源は明治時代にまで遡り、1871年(明治4年)には当時の行政規則である「富民一気救助規則」が示されました。これを皮切りに、日本の救済制度は時代とともに段階的な整備が進められてきたのです。

  • 1870年代〜: 「窮民一時救助規則」等により、食料提供や応急医療が制度化。
  • 1880年:国・府県の積立金で食料や農具を支援する「儲蓄金制度」が創設(のちに廃止)。
  • 1899年: 「罹災救助基金法」が制定。各府県に救助基金の設置が義務付けられる。
  • 1947年: 大規模地震(東南海・南海地震等)を背景に、現在の「災害救助法」を制定。
  • 2013年: 所管が厚生労働省から内閣府へ移管され、被災者支援体制が一元化。
    ※2025年現在、さらなる支援迅速化に向けた法改正(第217回国会)が審議されています。

1875年には「窮民一時救助規則」が制定され、罹災者に対する食料の提供、住宅の確保、農具購入のための資金貸付、応急医療、炊き出しなどが制度として行われるようになった。

1880年には「儲蓄金制度」が設けられ、中央政府と府県に資金を積み立て、食料供与、小屋掛け費、農具や種穀料の支給、租税補助などを行う仕組みが整備された。しかし中央儲蓄金の廃止により、この制度は停止されている。

1899年には「罹災救助基金法」が制定され、各府県に罹災救助基金を設置することが義務付けられた。この制度では、避難所費、食料費、被服費、治療費、埋葬費、小屋掛け費、就業費、学用品費、運搬用具費、人夫費の10項目が救助対象とされていた。

現在の災害救助法は、1947年10月に制定された法律であり、被災者救済を目的としている。その背景には、1944年の東南海地震、1945年の三河地震、1946年の南海地震など、相次いで発生した大規模地震があった。

さらに2013年の災害対策基本法改正により、災害救助法と災害弔慰金法の所管は厚生労働省から内閣府へ移管された。これにより、被災者生活再建支援法とあわせて被災者支援制度が一元的に管理される体制となった。

なお、2025年1月28日時点では、第217回国会において災害救助法および災害対策基本法の改正案が審議される予定とされている。

2 災害救助法の概要

(1)目的と実施体制

災害救助法は、災害発生時に国が地方公共団体、日本赤十字社などの関係団体や国民の協力のもと、応急的に必要な救助を行うことを目的としている。これにより、罹災者の保護と社会秩序の維持を図ることが法律の基本目的とされている。

救助の実施主体は都道府県知事であり、法定受託事務として実施される。市町村長はその補助を行う体制となっている。

2018年6月には法改正が行われ、2019年4月から施行された。この改正により、仮設住宅の供与や避難所運営などの権限を都道府県から政令指定都市へ移すことが可能となった。これにより、都道府県は指定都市以外の市町村に対する救助活動へ重点的に対応できる体制となった。

(2)法の適用基準(適用する災害の規模)

災害救助法が適用される災害の規模は施行令で定められており、基本的には市町村の人口規模に応じた一定数以上の住家滅失が基準となる。

例えば人口5,000人未満の町村では、住家の滅失が30世帯を超えた場合に適用される。なお、半壊・半焼世帯は2世帯を1世帯、床上浸水世帯は3世帯を1世帯の滅失として換算される。

また、住家被害の規模だけでなく、

・多数の者が生命または身体に危害を受けた、またはそのおそれがある場合
・住家被害の把握が十分でないが継続的な救助が必要な場合

などの状況でも適用されることがある。被災状況に応じて柔軟な判断が可能な仕組みとなっている。

対象となる災害には、次のようなものがある。

・大型台風による豪雨災害
・局地的豪雨による大規模土砂崩れ
・火山噴火による多数の被災者発生
・局地的地震による住民生活への重大な影響

(3)救助の種類・程度・方法・期間

災害救助の内容は、災害救助法および施行令によって定められている。救助の程度や方法、実施期間については、内閣総理大臣が定める基準に基づき、都道府県知事や一部の指定都市の市長が決定する。

災害救助法による支援は原則として現物給付であり、災害直後の生活を応急的に支えることを目的としている。そのため、炊き出しや弁当など比較的簡素な食事が提供される場合が多い。

しかし、食事制限のある被災者や高齢者などにとっては対応が難しい場合もあり、近年では被災者の多様なニーズに十分対応できないケースが指摘されている。このため、一般基準を超えて支援を行う「特別基準」が適用される事例も増えている。

また、応急仮設住宅の居住期間は原則として2年以内とされているが、火山噴火や大規模地震など復旧が長期化する災害では、この期間では十分に対応できない場合もある。

そのため実際の災害では柔軟な延長措置がとられることが多く、2018年には災害救助基準が大きく改訂された。これにより、建設型仮設住宅と借上げ型仮設住宅の供給、住宅規模要件の撤廃、建設費の増額などが実施された。

さらに、住宅の応急修理制度も拡充され、一部損壊(準半壊)に対する支援なども制度化されている。

救助の項目 具体的な内容(一例)
食料・飲料 炊き出し、お弁当の支給、飲料水の供給
被服・寝具 衣類、下着、毛布などの提供・貸与
居住の確保 避難所の設置、応急仮設住宅の供与
医療・助産 応急手当、処置、被災地での分娩介助
住宅の応急修理 屋根や台所など、日常生活に不可欠な箇所の修理
※原則として「現物」による支援(現物給付)となります。

まとめ

災害対策は、「予防」「応急」「復旧・復興」という時間の流れの中で整理され、それぞれの段階で異なる対策が行われる。とくに近年は、被災前の状態に戻す「復旧」だけでなく、新しい価値や仕組みを取り入れて地域を再生する「復興」の重要性が強く認識されるようになっている。

また、災害発生時の被災者支援を担う制度として災害救助法があり、都道府県を中心とした体制のもとで、食料の提供、避難所運営、仮設住宅の供与などの応急救助が行われる。制度は法令で基準が定められているが、実際の災害では被災状況や被災者のニーズに応じて柔軟な運用が行われている。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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