「みなし仮設」とは?新しい支援の形

仮設住宅の提供

1 仮設住宅とは

(1)応急仮設住宅と自力仮設住宅

震災などの自然災害で住まいを失った人にとっては、一時的に生活するための住宅が必要となる。このような住宅は一般に「仮設住宅」と呼ばれ、自治体が用意するものと、個人が自力で建てるものに大きく分けられる。

自治体が提供する仮設住宅には、「建設型仮設住宅」「民間住宅を借り上げて提供する(みなし仮設住宅)」の二つの形態がある。

自治体が提供する仮設住宅の形態
建設型仮設住宅
  • 公有地などにプレハブや木造住宅を新築
  • 同じ境遇の人とコミュニティを作りやすい
  • 完成までに一定の時間がかかる
みなし仮設住宅
  • 民間の賃貸住宅を自治体が借り上げて提供
  • 既存の住宅を活用するため迅速に入居可能
  • プライバシーが守られるが孤立しやすい
① 応急仮設住宅

応急仮設住宅は、災害救助法に基づき、「住家が全壊・全焼・流失し、自らの資力では住宅を確保できない者」を対象として供与される住宅である。ただし実際の運用では、災害によって住宅に困窮した人を対象とするため、所得要件は設けられていない。

住宅の規模は応急救助の趣旨を踏まえ、地方公共団体が地域の実情や世帯構成に応じて設定する。参考として、次のような規模が示されている。

応急仮設住宅の広さ目安
世帯構成 床面積の目安
単身用 6坪(約19.8㎡)
小家族用 9坪(約29.7㎡)
大家族用 12坪(約39.6㎡)
※地域や世帯構成により、自治体が柔軟に設定します。

建設型仮設住宅の費用は、平均で1戸当たり677万5,000円以内とされている。借上型の場合は、地域の住宅事情などを踏まえて決められる。

着工の目安は「建設型:災害発生から20日以内」「借上型:災害発生後できるだけ速やかに」とされている。

使用期間は完成から原則2年以内である。ただし、災害の規模や復興状況によって延長されることがある。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震などでは延長が認められた。

東日本大震災で供給された応急仮設住宅の構成は次の通りである。

1DK(6坪) 約14%
2DK(9坪) 約71%
3K(12坪) 約15%

寒冷地仕様も採用され、1戸当たりの建設費は

プレハブ建築協会プレハブ部会:約460万円
プレハブ建築協会住宅部会・地元企業方式:約600万円となっている。

エアコンや給湯器、ガスコンロなどは建設時に設置され、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器などの家電製品は日本赤十字社から寄付された。

事業の分担は一般的に、「建物の建設:都道府県」「用地確保・入居者募集・管理:市町村」という形で進められる。

② 自力仮設住宅

個人が自力で建てる仮設住宅は「自力仮設住宅」と呼ばれる。

自力仮設住宅は応急仮設住宅とは異なり、法律による制度的な保障はない。阪神・淡路大震災では神戸市内で約5,000棟が建設された。東日本大震災でも相当数が建設されたと推定されているが、正確な数は明らかになっていない。

(2)仮設住宅の「かたち」の変化

阪神・淡路大震災や新潟県中越地震の頃までは、軽量鉄骨を骨組みとしたプレハブ住宅を新たに建設する「建設型仮設住宅」が主流であった。

しかし、東日本大震災以降、仮設住宅の形態は大きく変化している。仮設住宅の供給方法が多様化している点が特徴である。

一つは住宅構造の変化である。木造仮設住宅の採用が増え、コンテナ住宅やトレーラーハウスなども活用されるようになった。

もう一つは、既存の民間賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設住宅」である。東日本大震災や熊本地震では、建設型仮設住宅よりも多く供給される事例も見られた。

仮設住宅の暮らしの現状と課題

ここでは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などにおける仮設住宅の供給状況を概観する。

(1)阪神・淡路大震災

阪神・淡路大震災では、1995年1月17日の地震発生から約7か月後の8月10日に、4万8,300戸の応急仮設住宅が完成した。

入居対象は資力の有無にかかわらず、住宅を失い入居を希望する世帯とされた。仮設住宅の多くは兵庫県内に建設され、「兵庫県内:約4万7,230戸」「神戸市:約2万9,178戸」であった。

神戸市では、六甲山北側の山間部やポートアイランド、六甲アイランドなどの人工島に多く建設された。被害の大きかった旧市街地で建設された仮設住宅は、全体の約18%にとどまった。

これは、上下水道などのインフラが整備された土地を優先したこと、公有地を優先して利用したことなどが理由である。民有地の利用は約10%にとどまった。

仮設住宅団地では、買い物施設や医療・福祉施設が付近に少ない場所も多く、特に郊外では生活の利便性確保が大きな課題となりました。また、当時の鉄骨系プレハブ住宅は断熱性能が十分とは言えない面もあり、居住環境の改善を求める声も上がりました。

入居決定が抽選制であったことから、元の地域コミュニティが分断され、高齢者をはじめとする方々が周囲との接点を失い、孤立化してしまうケースが社会問題となりました。こうした厳しい現実に直面したことで、仮設住宅における「見守り」や「心のケア」の重要性が強く認識されるようになりました。

阪神・淡路大震災の仮設住宅がすべて解消されるまでには約5年を要しましたが、この時の経験は大きな教訓となりました。その後の新潟県中越地震では、集落単位での入居を優先したり、住民同士の交流を促す「対面型」の住宅配置を採用したりするほか、診療所やケアセンターを併設するなど、生活の質とコミュニティを維持するための積極的な工夫が取り入れられています。

(2)東日本大震災

2011年3月11日の東日本大震災では、5万3,194戸の建設型仮設住宅が建設された。

しかし、被害が広域かつ大規模であったため、これを上回る6万8,645戸のみなし仮設住宅が供給された。これは、被災者が民間賃貸住宅を探して入居した後、自治体が契約名義を変更し「みなし仮設住宅」として認める仕組みである。広域避難が行われたため、みなし仮設住宅は全国各地で提供された。

東日本大震災の仮設住宅には、次のような特徴が見られた。

① 木造仮設住宅の増加
② 民有地活用の拡大
③ みなし仮設住宅の大量供給
④ 産業用仮設施設の整備
⑤ 福島県では長期化

大規模災害に備えて

将来想定されている首都直下地震や南海トラフ地震では、極めて大きな住宅被害が発生すると予測されている。

最大被害想定では、「首都直下地震:約310万戸」「南海トラフ地震:約680万戸」の住宅被害が想定されている。これに対し、必要とされる仮設住宅の数は「首都直下地震:約94万戸」「南海トラフ地震:約205万戸と推計されている。

このため、既存住宅を活用する「みなし仮設住宅」の拡大や、建設型仮設住宅を迅速に供給する体制の整備が重要とされている。

仮設市街地を復興の拠点に

今後の大規模災害では、建設型仮設住宅だけでなく、みなし仮設住宅や広域避難の活用がさらに増えると考えられている。

東京都では、被災地内に仮設住宅だけでなく、店舗、事務所、工場などを集めた「仮設市街地」を整備し、復興の拠点とする考え方が提案されている。

仮設市街地とは、仮設住宅だけでなく、生活や産業を支える施設を含めて整備する「仮設のまち」という発想である。

民間研究グループは、仮設市街地の基本原則として次の四つを提案している。

1 地域一括(まとまって住む)
2 被災地近接(被災地の近くに建設)
3 被災者主体(被災者も参加してつくる)
4 生活総体(住宅だけでなく生活施設も整備)

今後の復興では、仮設市街地を拠点としながら、広域避難者やみなし仮設住宅の入居者とも連携し、地域の再建を進めていくことが重要とされている。

まとめ

仮設住宅は、災害によって住まいを失った人が生活を再建するまでの間、生活の基盤を支える重要な存在です。近年は、建設型だけでなく「みなし仮設」や木造住宅、トレーラーハウスなど、地域の特性に応じた多様な供給方法が広がっています。

一方で、立地環境やコミュニティの維持など、過去の震災で浮き彫りになった課題は、決して特定の地域だけのものではありません。将来想定される大規模災害は全国どこでも起こりうるものであり、住宅の確保と並行して、一人ひとりが孤立せず、安心して暮らせる地域コミュニティをいかに守るかという「復興の仕組みづくり」が、今まさに求められています。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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