4 復旧・復興支援のための法体系
1 激甚災害指定
(1)激甚災害と激甚災害指定
大規模な災害が発生し、地方公共団体だけでは対応が困難となる場合、国は特別な財政支援を行う制度を設けている。災害対策基本法(1961年)では、被害が特に大きい災害を「激甚災害」として指定する仕組みが定められている。
この指定を受けた災害には、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(1962年)が適用され、地方公共団体への特別な財政援助や、被災者に対する追加的な財政措置が実施される。
通常の災害復旧事業に対する補助や災害復旧貸付に加えて、激甚災害法に基づく各種の特例措置が適用される仕組みである。これは、災害が国民経済に影響を及ぼし、地方財政への負担が過大となる場合に対応する制度といえる。
- 公共土木施設等の復旧: 国庫補助率が通常より大幅に引き上げられる
- 農地・農林水産業の復旧: 被災した農家等への再建支援・融資が拡充
- 中小企業の支援: 災害復旧貸付の金利優遇や保証枠の拡大
(2)激甚災害法に基づく特例措置
激甚災害に指定されると、被害の規模や状況に応じて、さまざまな特例措置が適用される。
制度創設当初は、特定地域で大きな被害が発生しても、全国規模の被害額が基準に達しない場合には激甚災害に指定されないという課題があった。
この問題に対応するため、1968年に市町村単位の被害額を基準とする「局地激甚災害指定制度」が導入された。これにより、限られた地域で大きな被害が生じた場合でも、特例措置を適用できるよう制度が補完された。
2 被災者生活再建支援法
(1)法の目的
被災者生活再建支援法は、自然災害によって生活基盤に重大な被害を受けた世帯に対し、生活再建支援金を支給する制度である。
都道府県が拠出する基金を活用して支援金を支給し、被災者の生活再建を支えるとともに、住民生活の安定と被災地の早期復興を図ることを目的としている。
(2)制度の経緯
この法律は、1995年の阪神・淡路大震災を契機として、1998年に制定された。その後、災害の経験を踏まえながら制度の見直しが段階的に行われてきた。
主な改正は次のとおりである。
2004年:支給限度額の拡充、居住安定支援制度の追加
2007年:定額渡しきり方式の導入、年齢要件・年収要件の撤廃
2010年:広域的に住宅被害が発生した場合への制度拡充
2020年:中規模半壊世帯を加算支援金の対象に追加
制度は、災害の経験を踏まえながら改正が重ねられてきた。
(3)法適用の要件
①対象となる自然災害
次のような被害が発生した場合に制度が適用される。
・災害救助法施行令に定める基準に該当する市区町村
・住宅全壊10世帯以上の市区町村
・住宅全壊100世帯以上の都道府県
・上記地域に隣接し住宅全壊5世帯以上の市区町村(人口10万人未満)
・複数の被災都道府県がある場合、住宅全壊5世帯以上(人口10万人未満)など
※人口要件については、市町村合併に伴う特例措置が設けられている。
②支給対象世帯
支援金の対象となる世帯は次のとおりである。
・住宅が全壊した世帯
・半壊した住宅を解体した世帯(解体世帯)
・長期間居住不能となった世帯(長期避難世帯)
・大規模半壊世帯
・中規模半壊世帯
(4)支給金額
支援金は、次の二つを合計した額として支給される。
・住宅被害の程度に応じて支給される基礎支援金
・住宅再建方法に応じて支給される加算支援金
なお、支援金の使途は特に限定されていない。
(5)支給主体と国庫補助
支援金は、国の指定を受けた被災者生活再建支援法人(公益財団法人 都道府県センター)が支給する。支援金は、都道府県が拠出する基金(約1,480億円)を原資としており、国はその2分の1を補助している。なお、東日本大震災では国庫補助が5分の4に拡充された。
(6)適用事例
この制度は、2024年11月末までに98の災害で適用されている。
支給実績は次のとおりである。
支給世帯数:約31万3,451世帯
支給総額:約5,488億円
3 大規模災害復興法
(1)制度の概要
東日本大震災の経験を踏まえ、将来の大規模災害に備えて復興の枠組みをあらかじめ制度化するため、2013年に大規模災害復興法が制定された。
(2)復興の枠組み
①復興対策本部
・大規模災害が発生した場合、内閣総理大臣は必要に応じて内閣府に復興対策本部を設置できる。
・政府は復興の基本方針を定め、それに基づいて復興政策を進める。
②地方自治体の対応
被災した市町村は、政府の復興基本方針を踏まえて復興計画を作成する。都道府県も復興方針を定めることができる。
(3)復興計画の特例措置
復興計画の策定にあたっては協議会を設置し、協議のうえ計画を公表することで、
・土地利用計画の変更
・各種許認可手続き
などを一括して処理できる特例措置が設けられている。
(4)災害復旧事業の代行
大規模災害では、被災自治体の要請により「都道府県」「国」が復旧事業を代行することができる。対象となる主な事業は「漁港」「道路」「河川」「海岸保全施設」である。
災害は「特定大規模災害」「非常災害」に指定され、国は工事費の最大9割程度を負担する。
この制度は、熊本地震で「非常災害」として初めて適用された。
4 災害廃棄物処理
大規模災害では大量の災害廃棄物(がれき)が発生するため、市町村の処理能力を超える場合に備え、国が市町村に代わって処理を行う制度が整備されている。この制度は、改正災害対策基本法と改正廃棄物処理法により整備され、2015年8月から施行された。
東日本大震災では約3,000万トンの災害廃棄物が発生し、市町村のみでは対応が困難となったため、国が処理を代行した経緯がある。
制度改正により、「市町村の処理能力を超える場合」「高度な処理技術が必要な場合」には、国が処理を代行できるようになった。また、仮置き場の事前選定や施設の相互利用など、平常時からの連携体制の強化も求められている。
西日本豪雨では、平成30年7月豪雨により次の量の災害廃棄物が発生した。
岡山県:約41万トン
広島県:約196万トン
愛媛県:約53万トン
合計約290万トンとなり、2016年熊本地震の約300万トンに匹敵する規模となった。
(環境省「災害廃棄物対策情報サイト」)
5 被災マンション法
阪神・淡路大震災後の1995年、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)が制定された。この法律は、被災したマンションの再建を円滑に進め、復興を迅速化することを目的としている。
従来、マンションの取り壊しや敷地売却には区分所有者全員の同意が必要であったが、この法律により、所有者の5分の4以上の同意で実施できるようになった。
さらに2013年の改正では、
・建物の一部が滅失した場合
・マンション価値の2分の1以上が失われた場合
にも適用できるよう制度が拡充された。
この法律は政令で指定された大規模災害に限り適用されており、
・阪神・淡路大震災
・東日本大震災
・熊本地震 などで適用されている。
まとめ
大規模災害からの復旧・復興を進めるため、日本では複数の法制度が整備されている。
激甚災害指定による財政支援、被災者生活再建支援法による生活再建支援、大規模災害復興法による復興の枠組み整備などにより、被災自治体や被災者を支える仕組みが構築されている。
さらに、災害廃棄物処理や被災マンションの再建など、個別の課題に対応する制度も整備されており、災害対応は法律による多層的な支援体制のもとで進められている。
※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください
※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。
