地震に関する情報の理解
建築物・土木構造物の被害
大地震の揺れにより、家屋やビル、橋や道路などの建築物・土木構造物が損傷・倒壊し、耐震性の低い建物ではライフライン(電気・水道・ガスなど)の断絶も起こりやすくなります。
「強い地震動は建物や道路に甚大な被害をもたらします。例として、阪神・淡路大震災では住宅10万棟以上が全壊し、高速道路が横倒しになるなどの被害が発生しました。
地震には強いと思われていた鉄筋コンクリート造りのビルでも、1階や中間階がつぶれる被害が見られました。建物被害は、1981年の新耐震基準以前に建てられた建物に集中しました。新耐震基準の建物は比較的被害が少ないことが確認されました。
また、室内では家具の転倒や落下による死傷例も多く報告されており、普段から家具を固定したり、配置を工夫することが重要です。
広域火災の被害
地震によって火災が発生すると、通電火災や火災旋風(火災で発生する強い渦巻き風で、炎の広がりを早める現象)などによって広範囲に広がることがあります。特に都市部では、多数の家屋が同時に燃え、人的被害が甚大になることがあります。
例えば、1923年の関東大震災では、火災による犠牲者が非常に多く、地震そのものよりも火災の被害が大きかったとされています。
1995年の阪神・淡路大震災でも、神戸市内だけで60か所以上から火災が発生し、消防当局も同時多発火災に対応できませんでした。地震で倒壊した建物や道路が消防車の進入を妨げ、放水を始めても水がすぐに止まってしまうなど、被害拡大の要因となりました。
また、耐火性のある建物でも、地震の揺れで窓ガラスが割れ、火が建物内を通り抜けて反対側に延焼する例もありました。さらに、停電後に電力が復旧した際、地震時に使用していたストーブや電熱器具に再び通電して火災が発生するケースも多く、これを「通電火災」と呼びます。
斜面崩壊(地滑り・がけ崩れ)
地震の揺れで斜面が崩れ、住宅地や道路を覆うことがあります。山沿いや丘陵地で発生し、人命や建物への被害が出ることがあります。
過去の地震では、広い範囲で斜面崩壊が発生しました。
- 2004年 新潟中越地震
約3,800か所の斜面崩壊が発生。地滑り地帯が多い地域で被害が目立ちました。 - 2008年 岩手・宮城内陸地震
約3,500か所で斜面崩壊が発生。中山間地域の過疎・高齢化の問題も浮き彫りになりました。 - 2018年 北海道胆振東部地震
前の台風による降雨で地盤が緩み、厚真町などで表面の地盤が崩れる災害が発生しました。
山体崩壊・岩屑なだれ
大規模な地震では、山全体が崩れる「山体崩壊」が発生することがあります。山体崩壊は、人の力では食い止められない非常に大きな地盤災害です。
例えば、1984年の長野県西部地震(M6.8)では、御岳山の尾根部分から山体が崩れ、大規模な岩屑雪崩が発生しました。崩れた土砂の量は約3,600万㎥と推定され、谷を破壊しながら約10kmも流下しました。
岩屑雪崩は、空気中を高速で流れるため、通常の土石流より摩擦が少なく、破壊力が大きいのが特徴です。雪の積もった地域では、このような複合災害が起きる場合もあります。
液状化現象
液状化とは、地震の揺れによって地盤が液体のようになり、建物や道路が傾いたり沈んだりする現象です。砂と水でできた地盤は、強い揺れで砂の粒同士のつながりが失われ、液体のように振る舞うことがあります。特に砂質の地盤で地下水が浅い場所や、埋立地、河川下流域、砂丘の内陸側などで起こりやすくなります。
液状化は避難や緊急車両の通行にも影響するため、住宅や施設の建設時には地盤の強化や支持杭の設置が重要です。
実際の被害例としては、阪神・淡路大震災で人工島ポートアイランドが大規模に液状化し、地震直後はまるで洪水のようになりました。東日本大震災では、千葉県浦安市をはじめ広い範囲で住宅が傾き地面が陥没し、能登半島地震でも内灘砂丘や河北潟で液状化による住宅被害が発生しました。
このように、液状化による被害は特に埋立地で起こりやすいという特徴があります。
断層運動による被害
活断層の上にある地域では、地震により地面がずれることがあります。断層をはさんで地面が隆起・沈降することで、道路や建物が破損したり、橋や上下水道などのインフラに影響を及ぼすことがあります。
例えば、2024年1月の能登半島地震では逆断層の運動により輪島市西部で最大4mの隆起が発生し、漁港では海底が露出して船が着岸できなくなりました。また、断層運動により地面が大きくずれると、住宅の基礎や道路、農地などに被害が出ることがあります。
長周期地震動の被害
長周期地震動とは、周期が数秒〜十数秒と長く、船酔いのようにゆったりと揺れる地震です。特に超高層ビルや大型建物では、揺れの周期と建物の固有周期が一致すると共振が起こり、高層階ほど長時間大きく揺れることがあります。
この揺れにより、家具の倒壊や壁・天井の破損など、思いがけない被害が発生することがあります。実際の例として:
- 2003年 十勝沖地震
震源から約250km離れた苫小牧市で石油タンクが火災を起こしました。 - 2004年 新潟中越地震
東京・六本木ヒルズのエレベーターが共振でワイヤの一本が切れました。 - 2011年 東日本大震災
東京の高層ビルが長時間大きく揺れました。
震源から遠くても、軟らかい地盤の都市では揺れが増幅されることがあります。高層ビルは倒壊の危険性は低いものの、室内の家具の転倒や火災時の避難困難などの被害が懸念されます。そのため、高層建築物は長周期地震動を想定した安全性の点検が重要です。
気象庁は揺れの大きさを4つの階級に分け、2019年から観測情報を発表しています。2023年2月からは、緊急地震速報の基準にも階級3・4が追加されました。