地震に関する情報の理解
地震のあとにもさまざまな地震活動が続くことがあります。また、日本では南海トラフ巨大地震への備えも重要な課題となっています。ここでは地震情報の基礎知識と南海トラフ地震について整理します。
地震に関する情報には、余震や群発地震、南海トラフ地震臨時情報など、聞き慣れない言葉も少なくありません。正しく理解することで、災害時の情報を落ち着いて判断しやすくなります。
続く地震
発生
余震(地震活動)
大きな地震の後には、「余震」と呼ばれる地震が続いて発生することがあります。近年では、「余震だから小さい地震とは限らない」という考え方から、気象庁などでは「地震活動」という表現を使うこともあります。
また、大きな地震の後に、さらに大きな地震が発生した場合には、後から発生した地震を「本震」、先に起こった揺れを「前震」と呼ぶことがあります。
余震は、地震の規模が大きいほど発生回数も多くなり、時間の経過とともに徐々に減少していく傾向があります。また、余震の中でも最も規模が大きい地震を「最大余震」と呼び、余震は時間の経過とともに減少していきますが、数日から数週間は大きな揺れに注意が必要です。
余震で注意したいのは、本震で傷んだ建物が倒壊したり、救助活動や片付けの最中に二次被害が発生したりすることです。また、余震が多発している時は、緊急地震速報の精度が一時的に下がる可能性があるため、慎重な行動が必要です。
群発地震
群発地震とは、本震(大きな地震)がないまま、数か月から数年にわたって繰り返し地震活動が起こることをいいます。比較的小さな地震が多く、活動が活発になったり、静かになったりを繰り返しながら続く特徴があります。
この現象は火山活動に関連しているとも考えられており、伊豆諸島やトカラ列島などでも、たびたび観測されています。
能登半島周辺では、群発地震が続いたのち、2024年1月1日に最大震度7を観測する能登半島地震が発生するなど、注意が必要です。
一回ごとの揺れが小さくても、長期間続くことで不安や疲労が積み重なることがあります。
そのため、活動が続いている地域では、日頃からの備えや情報確認が重要です。
誘発地震と火山噴火への影響
大きな地震が発生すると、その揺れや地殻変動の影響によって、震源地から離れた場所でも地震が発生することがあります。このような地震を「誘発地震」と呼びます。
2011年の東日本大震災では、長野県栄村や富士山直下を震源とする地震が発生しました。
これは、大きな地震によって地盤にかかる力のバランスが変化し、別の場所でも地震が発生しやすくなった可能性があると考えられています。
また、大きな地震のあとには、火山活動に影響を与えることもあります。
東日本大震災のあとには、東北から関東地方にかけて複数の火山周辺で地震活動が一時的に活発化しました。さらに、1707年の宝永地震の49日後には富士山が大噴火するなど、地震のあとに火山噴火が発生した例もあります。
このように、地震活動と火山活動には関連がある可能性があると考えられています。
アウターライズ地震
アウターライズ地震とは、海溝の外側にある海洋プレート側で発生する地震です。
陸地から離れた沖合で発生するため、陸上の揺れは比較的小さいことがありますが、大きな津波を伴いやすいという特徴があります。また、プレート境界で発生した巨大地震のあとには、周辺の地盤やプレートに影響を与え、アウターライズ地震が発生する可能性があると考えられています。
そのため、大きな地震のあとも、沖合で発生する津波を伴う地震に注意が必要です。東日本大震災のあとも、アウターライズ地震への注意が呼びかけられました。
南海トラフ地震について
南海トラフ地震とは、駿河湾から日向灘沖にかけて概ね100年から200年程度の間隔で発生しているマグニチュード8クラスの巨大地震のことです。
南海トラフ地震は、東海・東南海・南海と呼ばれる地域が大きく揺れる地震で、同時に発生する場合や、時間差で順番に発生する場合があるなど、発生パターンが毎回異なる特徴があります。
発生の仕方が毎回異なることから、現在は「東海・東南海・南海」と地域を区切って被害想定するのではなく、「南海トラフ巨大地震」として一体で想定されています。
発生時期を予測することはできませんが、政府は今後30年以内にマグニチュード8クラスの地震が発生する確率を80%程度としています。(2025年時点)
過去の南海トラフ地震では、1707年の宝永地震や1854年の安政東海・南海地震など、巨大地震や大津波が繰り返し発生してきました。しかし、2011年の東日本大震災を受け、過去数百年の記録だけをもとに想定するには限界があることが改めて認識されました。
そのため現在では、過去の記録だけでなく、津波堆積物などの調査も進めながら、より大きな地震や津波も想定した被害予測が行われています。
国の被害想定では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、広い範囲で強い揺れや津波、液状化、火災などが発生し、甚大な被害につながるおそれがあると想定されています。
また、西日本を中心に、電力・燃料・物流など社会インフラへの影響も大きいと考えられており、現在も、耐震化や津波避難対策などの見直しが続けられています。
南海トラフ地震臨時情報の仕組み
南海トラフ地震臨時情報について
これまで日本では、東海地震に対して「直前予知」を前提とした対策が進められてきました。
・1970年代に東海地震対策の検討が始まる
・1978年に大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定
・前兆現象が確認された場合に「警戒宣言」を発令する仕組みを整備
しかし、1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災などを受け、地震の直前予知は極めて困難と考えられるようになりました。
そのため、2017年には警戒宣言の仕組みは事実上凍結されています。
一方、南海トラフでは、
・震源域の一部で地震が発生した後、別の場所で続いて巨大地震が起こる可能性があること
・東日本大震災の2日前にM7.3の地震が発生していたこと
などから、「完全な予知はできなくても、注意を呼びかける情報は必要」と判断されました。
こうして整備されたのが「南海トラフ地震臨時情報」であり、2019年5月から運用が始まっています。
南海トラフ地震臨時情報の種類
臨時情報には、次の4つがあります。
- 調査中
南海トラフの震源域周辺で、
・気象庁マグニチュードでm6.8以上の地震が発生した場合
・通常とは異なる「ゆっくりすべり」が発生した可能性がある場合
に発表され、専門家による評価検討会が開かれます。 - 巨大地震警戒
評価の結果、プレート境界でMw8.0以上の地震が発生したと判断された場合に発表されます。
震源域の東側または西側だけで地震が起きた「半割れ」の状態を想定しています。 - 巨大地震注意
Mw7.0以上の地震や、プレートの固着状態が変化していると考えられる場合に発表されます。
過去の地震で見られた「一部が先に動く」ケースや、想定されていた前兆すべりを念頭に置いたものです。 - 調査終了
特別な変化が確認されなかった場合に発表されます。
南海トラフ地震臨時情報は、調査開始から評価・発表まで次のような流れで運用されています。
M6.8以上の地震が発生
異常なゆっくりすべりの可能性あり
M8以上の地震
(※1)
(※2)
(※3)
満たさない
※1(半割れケース)
南海トラフの想定震源域にあるプレート境界で、マグニチュード8.0以上の地震が発生した場合。
※2(一部割れケース)
南海トラフの想定震源域にあるプレート境界で、マグニチュード7.0以上8.0未満の地震が発生した場合、
または想定震源域の外側(海溝軸の外側おおむね50km以内)で、マグニチュード7.0以上の地震が発生した場合。
※3(ゆっくりすべりケース)
観測により、通常とは異なるゆっくりすべりが確認された場合。
臨時情報が出た時の行動と今後の課題
大前提として、「南海トラフ地震臨時情報」が発表されても、慌てる必要はありません。
また、発表されたからといって、必ず巨大地震が発生するわけではありません。そのため、日頃から準備している防災用品や避難計画を見直しながら、原則として通常の社会生活や企業活動を続けることになります。
ただし、「巨大地震警戒」が発表された場合には、後から発生する地震によって津波避難が間に合わないおそれのある地域について、市町村が事前に避難対象地域を指定し、1週間の事前避難を呼びかけます。避難先は知人や親類の家を基本とし、避難先の確保が難しい場合には、市町村が避難所を開設することになっています。
最近の事例では、2024年8月8日に、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。この時は特別な地殻変動は観測されず、1週間後に注意の呼びかけは終了しましたが、一部地域では海水浴場の遊泳禁止や、新幹線の徐行運転などが行われ、社会への影響も見られました。また、2025年1月13日にも日向灘の地震を受けて臨時情報が発表されています。
これらを受けて、国と自治体による意見交換や運用改善が進められており、情報発表時の説明体制なども見直されています。平常時から備蓄や避難先、家族との連絡方法を確認しておくことが重要です。
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※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』などを参考に、当サイトの視点で再構成・解説しています。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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