【地震・津波】家庭でできる地震への備え

家庭でできる地震への備え

地震に備えた「事前の備え」と家族防災会議

大きな地震に備えるためには、家族全員で「いざという時の行動」をあらかじめ話し合っておくことが大切です。災害時の行動や連絡方法など、「防災時のわが家のルール」を確認しておきましょう。

ただし、一度話し合っただけで安心してはいけません。
家族構成や生活環境は少しずつ変わるため、少なくとも年に1回は家族防災会議を行い、内容を見直すことが重要です。

家族防災会議で確認しておきたい主なポイント

  • 地域の災害リスクの確認
    ハザードマップや想定被害を見て、自分たちの住む地域にどのような危険があるかを把握する。
  • 自宅内の安全確認
    家の中に危険な場所はないか、地震の際に比較的安全な場所はどこかを確認する。
  • 避難場所と避難経路の確認
    指定された避難場所や避難所までの道を、昼間と夜間の両方で実際に歩いて確認する。
  • 家庭内の備蓄の確認
    食料や飲料水、薬などに期限切れがないか、保管場所は適切かを点検する。
  • 非常持ち出し品の準備
    季節や家族構成(乳幼児、高齢者、持病のある人など)に応じて中身を見直す。
  • 消火用品・防災用品の確認
    消火器や簡易消火用具、防災資機材が使える状態かを確認する。
  • 災害時の行動の確認
    高齢者や支援が必要な家族がいる場合の避難方法、ガス栓やブレーカーの対応などを決めておく。
  • 家族の連絡方法の確認
    災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板、SNSなどの安否確認手段を確認する。
    また、被災地から離れた親戚や知人の家を「連絡の中継先」として決めておく方法も有効です。

防災用品の考え方

防災用品は、あらゆる災害を想定し始めると、必要な物が次々と増えてしまいます。
そのため、すべてを完璧にそろえることは現実的ではありません。

大切なのは、「誰が」「どこで」「何のために」備えるのかを考えることです。

たとえば、

  • 家庭で命を守るために備える「自助」の防災用品
  • 地域で助け合うために備える「共助」の防災用品

では、必要な物が違って当然です。
また、家族構成(乳幼児や高齢者の有無)や、地域の特性によっても、必要な防災用品は変わります。

防災用品は、「とりあえずそろえる」のではなく、自分たちに本当に必要なものを考えて備えることが重要です。

さらに、できるだけ「普段から使えるもの」または「普段から使い慣れているもの」を選ぶようにしましょう。

非常時だけに使う特別な道具よりも、
日常生活で使っている物の延長にある防災用品の方が、
いざという時に落ち着いて使うことができます。

防災ポーチ

防災ポーチとは、普段から日常バッグに入れて持ち歩く防災用品です。
外出中に災害が発生した直後、身の安全を確保し、避難所までを含めておおむね24時間程度、安全に行動・避難するための最小限のグッズをまとめたものです。

防災ポーチに入れておきたい必須アイテム

※これから紹介する防災グッズの中身は、家族構成(乳幼児や高齢者の有無)や
 持ち歩く場所・時間帯、地域の特性などによって変わります。
 ここに示す内容は一例として、自分に必要なものを考えて調整してください。
※紹介するアイテムの多くは、100円均一ショップなどで購入できるものです。

情報・連絡・携帯電話(スマホ)予備バッテリー
・紙に書いた緊急連絡先
・身分証明書のコピー
・現金(小銭)
食料・栄養補助食品(栄養バーなど。例:カロリーメイト)
・飴・チョコレート・一口サイズのお菓子(少量を小袋にまとめる)
・ナッツ類(少量でエネルギーを補給できるもの)
身を守る用品・小型ライト
・ホイッスル
・マスク、ティッシュ、ウェットティッシュ、圧縮タオル
・ポンチョ(簡易雨具)・アルミブランケット
・軍手
衛生・応急・常備薬 
・簡易救急用品(絆創膏やシップなど)
・携帯トイレ
その他・メモ帳 (鉛筆)
個別の品物・冷却シート
・手指用の消毒液

防災バッグ

防災バッグとは、自宅から避難する必要が生じた場合に備えて、あらかじめ準備しておく防災用品です。
地震や風水害などで避難所へ移動する際に、救援物資が届くまでの間を安全に過ごすために必要な物をまとめたものを指します。

防災ポーチが「外出先で災害が起きた直後」を想定しているのに対し、防災バッグは、自宅から避難所へ移動し、その後の生活を支えることを目的としています。

災害は、夜間や休日など、役所や多くの施設が閉まっている時間帯に発生することも多く、救援物資の到着までに時間がかかる場合があります。
そのため、防災バッグには、避難後すぐに必要となる生活用品や身を守るための物を入れておくことが大切です。

玄関や寝室など、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。

防災バッグに入れておきたい必須アイテム

貴重品※1・財布・携帯電話(スマホ)など
・現金(小銭を含む)キャッシュカード
・マイナンバーカード、免許証、保険証(原本またはコピー/状況に応じて)
・銀行の通帳、印鑑
情報・連絡・予備バッテリー、充電ケーブル
・紙に書いた緊急連絡先
・身分証明書のコピー
・筆記用具、メモ帳
・携帯用ラジオ
食料・飲料・飲料水
・非常食(レトルト食品、アルファ化米など)
・栄養補助食品(栄養バーなど)
・飴・チョコレートなどの糖分補給用食品
・乳幼児、高齢者・病人向けの食品
・ラップ、割りばし
衛生・生活用品・マスク
・ティッシュ、ウェットティッシュ
・歯磨きセット、歯みがきシート
・タオル、圧縮タオル
・石鹸、ドライシャンプー、手指用消毒液
・携帯用トイレ
・ビニール袋(ごみ袋・多用途)
・衣服・着替え(下着・靴下)
・スリッパまたは簡易シューズ
・耳栓・アイマスク(避難所での生活対策)
・軍手・ビニール手袋
・ポンチョ(簡易雨具)、アルミブランケット、雨具
・ライター(管理・取扱注意)
応急・健康・常備薬
・市販薬、絆創膏、シップ、消毒用品、ガーゼ、体温計等
・使い捨てカイロ・冷却シートなど体調管理用品(必要に応じて)
・スキンケア用品(リップクリーム・保湿クリームなど/必要に応じて)
その他・懐中電灯、LEDランタン
・ペット用品
・大切な思い出の品(小さく、避難の妨げにならないもの/例:写真など
・リラックスグッズ(音やにおいの出ないもの/例:本、紙のパズルなど)
・おもちゃ(子どもがいる家庭向け・静かに遊べるもの/例:ぬいぐるみなど
・化粧品(必要な人は最小限)
個別に追加するもの・乳幼児・高齢者・持病のある方に必要な物
・予備の眼鏡・替えのコンタクトなど
・生理用品・おむつ・介護用品 など

※1貴重品は避難中や避難所での盗難・紛失を防ぐため、常に身につけるなど、取り扱いと保管には十分注意してください。
※2 災害直後の混乱した状況では、避難所によって、食品や生活用品の一部を一時的に集約し、共同で管理・配布する対応が取られたことがあります。こうした事例は、過去の災害の記録からも確認されています。

自宅の備蓄

自宅の備蓄とは、地震や風水害などの災害が発生したあと、自宅で生活を続ける場合(在宅避難)や、避難所に行かずに過ごす場合に備えて、あらかじめ自宅に用意しておく防災用品や生活必需品のことです。

防災ポーチや防災バッグが「持ち出す備え」であるのに対し、自宅の備蓄は、自宅での生活を支え続けるための備えが中心になります。

災害時には、電気・水道・ガスといったライフラインが止まることも少なくありません。
そのため、救援物資が届くまでの間、数日間は自宅で安全に過ごせる状態を想定して準備しておくことが重要です。

公的機関では、最低でも3日分の備蓄を基本とし、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大規模災害を想定する場合には、1週間分以上の備蓄が望ましいとされています。

また、非常食については、日常的に食べて、食べた分を買い足す「ローリングストック」という方法を取り入れることで、無理なく新しい備蓄を保つことができます。

自宅の備蓄は、「特別なものをそろえる」よりも、普段の生活の延長として、使える状態を保つことが大切です。

自宅で備蓄しておきたい必須アイテム

※ここで紹介する品物は、必ずしも「新しく買い足して保管する」必要はありません。
 普段使っている物が、災害時にも使える状態か、一定量が確保できているかを定期的に点検しておきましょう。
 家族構成や住環境、収納スペースに合わせて、無理のない備えを心がけましょう。

食料・飲料・飲料水・生活用水(1人1日 約3L)
・主食になる非常食
(アルファ化米、レトルトご飯、乾麺 など)
・おかず類
(缶詰、レトルト食品 など)
・保存食品・簡便食品
(ドライフード、インスタント食品)
・補助・嗜好品
(栄養補助食品、経口補水液、梅干し、お菓子)
・調味・食事用品
(調味料、使い捨て食器、ラップ、割りばしなど)
・非常用給水袋(ウォーターバッグ)
衛生・清潔用品・携帯用トイレ・簡易トイレ
・トイレットペーパー
・ティッシュ・ウェットティッシュ
・歯ブラシ・歯みがき用品
・石鹸・ドライシャンプー・手指用消毒液
・タオル
・ビニール袋(ごみ袋・多用途)
・洗濯用品(下着などを手洗いするための用品)
・洗面用具
調理・生活用具
(ライフライン対策)
・卓上コンロ・携帯コンロ
・固形燃料・ガスボンベ
・鍋・やかん
・ラップフィルム
・新聞紙
・ろうそく
・ポリ容器、バケツ
快適に過ごすための備え・毛布・寝袋
・アルミブランケット
・使い捨てカイロ
・冷却シート
・扇子・うちわ
健康・医療用品・常備薬
・市販薬
・救急セット
・体温計
・マスク
照明・電源・情報・懐中電灯・LEDランタン
・乾電池(予備)
・モバイルバッテリー・ポータブルバッテリー・発電機
・携帯ラジオ
安全・作業用品・ヘルメット・防災ずきん
・軍手・作業用手袋
・靴(底が厚く安全なもの)
・バール・簡易工具(必要に応じて)
・消火器(設置・点検)
・ビニールシート・ブルーシート
・ガムテープ・養生テープ
・笛(ホイッスル)
・ロープ
・簡易工具(バール・スコップ等)
・自転車
個別に必要なもの・乳幼児用品(ミルク・おむつなど)
・高齢者・持病のある方のケア用品
・眼鏡・予備の眼鏡・コンタクト用品
・生理用品・介護用品
・ペット用品

命を守るための地震への備え

地震は、いつ・どこで起こるか分かりません。また、「これをすれば必ず助かる」という確実な方法も存在しません。だからこそ、まずは「命を守る」「けがをしない」ための環境づくりが、地震対策の第一歩になります。

建物の安全性を高め、地震が起きた瞬間に被害を最小限に抑えること。
そして、発生時にはその場の状況に応じた行動を取り、命を守り抜くことが重要です。
命を守ることができなければ、どれだけ地震後の備えを整えていても意味を持ちません。


建物の安全性を高める

阪神・淡路大震災では、犠牲者の8割以上が建物の倒壊や家具の転倒による圧死・窒息死であったとされています。建物が倒壊するかどうかは、命を守れるかどうかに決定的な差をもたらします。

また、建物の倒壊は人命被害だけでなく、

  • 火災が発生しやすくなる
  • 道路をふさぎ、救助・救援活動を妨げる
  • 避難生活が長期化し、復旧・復興が遅れる

といった二次的な被害にもつながります。
そのため、耐震化や補強など、建物自体の安全性を高めることは非常に重要な地震対策です。


家具類の転倒・落下・移動防止対策

阪神・淡路大震災に限らず、大地震では固定されていない家具類が転倒・移動し、室内が大きく損壊します。重い家具が胸部などを圧迫すると呼吸ができなくなり、窒息死に至る危険があります。

また、家具は倒れるだけでなく、

  • 食器棚の中の食器が落下・散乱する
  • ガラス片などでけがをする
  • 避難経路がふさがれ、行動が妨げられる

といった形で被害を拡大させます。
実際に、ピアノが部屋の中を移動したり、テレビや電子レンジなどが飛ばされるといった、平常時には想像しにくい事例も報告されています。

東京消防庁が、2003年から2016年に発生した大きな地震における負傷原因を調査した結果、負傷者の約30〜50%が家具類の転倒・落下によるものであったことが明らかになっています。

一方で、東京消防庁が実施している「消防に関する世論調査(2023年度)」では、
家具固定について「すべての家具類に実施している」が約8.6%、「一部の家具類に実施している」が約51.5%にとどまっています。

家具固定は、命を守るだけでなく、けがを防ぎ、安全に避難するためにも重要な対策です。
防災士をはじめ、一人ひとりがその重要性を再認識し、周囲にも広げていく必要があります。

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