台風と高潮のしくみと被害の特徴
台風の特徴と台風情報
台風は、主に夏から秋にかけて日本列島に接近、または上陸し、大雨や強風などの大きな気象災害をもたらします。太平洋赤道付近の暖かい海水によって発達した積乱雲の集まりが、回転しながら発達したものが台風であり、強い雨と風を伴って移動する熱帯低気圧である。
北半球では、地球の自転の影響により、風や空気の流れが進行方向の右に曲がる性質をもつ。
そのため、台風は低緯度では西へ進みながら北上し、上空に偏西風が吹く中・高緯度に入ると、進路を北東に変えて速度を速めることが多い。
台風の進路を左右する大きな要因の一つが太平洋高気圧である。
太平洋高気圧は、北半球では時計回りに空気を吹き出す性質があり、台風はその縁に沿って吹く風に乗って移動する。この縁に沿った風を縁辺風という。
台風の強さと大きさ
熱帯低気圧の中心付近で吹く風が最大風速17.2m/s以上になると、「熱帯低気圧」から**「台風」と呼ばれる。台風の強さは最大風速で、大きさは風速15m/s以上の強風域の半径によって区分される。
しかし、表1・表2に示すとおり、台風の強さと大きさには必ずしも関係はない。例えば、2013年11月の台風30号は、中心気圧895hPa、最大風速65m/sという「猛烈な」勢力を持っていたが、強風域の半径は500km未満で、大きさの階級には該当しなかった。
| 階級 | 最大風速 |
|---|---|
| 強い | 33m/s(64ノット)以上~ 44m/s(85ノット)未満 |
| 非常に強い | 44m/s(85ノット)以上~ 54m/s(105ノット)未満 |
| 猛烈な | 54m/s(105ノット)以上 |
| 階級 | 風速15m/s以上の半径 |
|---|---|
| 大型(大きい) | 500Km以上~ 800Km未満 |
| 超大型 (非常に大きい) | 800Km以上 |
台風と風
台風の風は、中心に近づくほど強くなるという特徴があります。
台風の風速は、10分間の平均風速を基準にして表されますが、実際には瞬間的に非常に強い風が吹くことがあります。いわゆる突風や最大瞬間風速は、平均風速の1.5倍から3倍に達することもあり、暴風域に入る前でも思わぬ強風に襲われるおそれがあります。
建物や車、人にかかる風の力は「風圧」と呼ばれ、風速の2乗に比例します。つまり、風速が2倍になると風圧は4倍に、4倍になると16倍にもなり、台風の接近とともに風の危険性は急激に高まります。
また、台風を構成する積乱雲の中には、強い上昇気流と下降気流が存在しています。この影響で、台風の周辺では竜巻やダウンバーストといった突風が発生することがあります。こうした現象は台風の中心付近だけでなく、台風から300kmほど離れた場所で起こることもあるため、広い範囲で注意が必要です。
台風と雨
台風の中心付近には、発達した積乱雲が渦を巻くように集まっており、強い風を伴った非常に激しい雨を降らせます。
また、台風本体の雨雲だけでなく、台風の周囲を吹く湿った空気の流れによって、台風が近づく前から雨が降り始めることもあります。
台風が日本の周辺の海上にあるとき、その東側を北へ向かって流れる暖かく湿った空気(暖湿気流)が日本列島に流れ込むと、集中豪雨が起こることがあります。
この湿った空気が、南東側に開けた山や斜面を上昇すると、雨雲が発達し、同じ場所で雨が降り続きます。風向きが変わらず、水蒸気の供給が続く場合、雨は長時間にわたって続くことになります。
さらに、そのタイミングで日本列島付近に前線が停滞していると、斜面がなくても同じ地域で強い雨が続くことがあります。この場合、台風本体の雨雲よりも多くの雨が降ることもあり、線状降水帯が発生すると記録的な大雨になるおそれがあります。
このため、台風が上陸する時だけに注意していると、対応が遅れてしまうことがあります。
台風・前線・太平洋高気圧の三つがそろった気圧配置のときは、台風から離れた場所でも大雨になる可能性があるため、早めの警戒が必要です。
高潮被害とその対策
海に囲まれている日本は、高潮の被害を受けやすい国です。
特に東京湾・伊勢湾・大阪湾の三大湾は南側に開いており、周辺には海抜ゼロメートル地帯が広がっています。人口や重要な施設も集中しているため、高潮による浸水が起きると、被害が大きくなりやすい特徴があります。
高潮は、主に台風や発達した低気圧によって発生します。
台風の中心付近では気圧が低く、気圧が1hPa下がると海面が約1cm上昇します。これを吸い上げ効果といいます。
さらに、台風の東側では強い南風が吹き、海水が陸地側へ押し寄せます。これを吹き寄せ効果といい、これらが重なることで海面の水位が大きく上昇します。
また、満潮の時間帯と台風の接近が重なると、高潮が発生しやすくなります。
ただし、高潮は必ずしも満潮の時刻と一致するとは限りません。満潮の時刻だけにとらわれず、台風の勢力や進路を含めて警戒することが重要です。
日本では、2018年9月の台風21号により、大阪湾で過去最高となる潮位(標高約3.3m)が記録されました。
この影響で関西国際空港では滑走路が浸水し、流されたタンカーが空港連絡橋に衝突しました。鉄道や道路が不通となり、空港が孤立する深刻な被害が発生しました。
このように、高潮は沿岸部の都市や重要施設に大きな影響を及ぼす災害です。台風接近時には、高潮の危険性も意識し、早めの情報確認と避難行動を心がける必要があります。