防災・危機管理を担う行政組織

防災・危機管理に関する行政組織

災害対応は、国・都道府県・市町村といった行政機関と、消防・警察・自衛隊などの実働機関が役割を分担し、連携して行われる。防災体制は、平常時に計画や調整を担う組織と、災害時に現場で活動する組織によって構成されている。ここでは、防災・危機管理に関わる主な行政組織の役割を概観する。

計画作成・調整のための組織

(1)国の行政組織

国の災害対策は、複数の省庁がそれぞれの専門分野を担当する体制で行われている。主な機関には、次のものがある。

総務省消防庁:火災対応や救助活動
警察庁:警備活動や治安維持
国土交通省:河川対策、道路維持、住宅の耐震化、海上保安庁の運用
厚生労働省:DMATなど医療チームの整備
防衛省:自衛隊による災害派遣

このように、災害対策は多分野にまたがるため、政府として情報を集約し総合的に対応するための中央組織が設けられている。

① 内閣官房

内閣官房長官の下には、常設組織として内閣危機管理監が置かれている。
大規模自然災害のほか、ハイジャックやテロなどの重大事件、航空機事故や原子力事故、弾道ミサイル事案など、さまざまな緊急事態を想定し、危機管理マニュアルの整備や訓練が行われている。実際に緊急事態が発生した場合には、内閣総理大臣官邸にある危機管理センターで初動対応が実施される。

② 内閣府

内閣府では、防災担当大臣を中心として、主に自然災害対策を担当している。
被害軽減対策や復興対策、被災者支援について関係省庁や地方公共団体との連絡調整を行うほか、平常時には中央防災会議の事務局として、防災基本計画などの企画・立案を担っている。

(2)都道府県の行政組織

都道府県は、広域にわたる災害への対応や市町村間の調整を担うとともに、消防・警察・自衛隊との連携の中心的な役割を持つ。そのため、知事直属の組織として危機管理監や防災監などの専門部署を設置している自治体も多い。また、行政機関間の情報伝達手段として利用される防災行政無線の維持管理も、重要な業務の一つとなっている。

(3)市町村の行政組織

市町村は住民に最も身近な行政機関であり、防災対応の最前線を担っている。主な役割は次のとおりである。

避難指示の発令
指定緊急避難場所・指定避難所の確保
物資の確保と配布
住民への情報伝達

さらに、市町村では、防災行政無線の管理や物資の備蓄、消防団・水防団の維持や育成なども行われている。自治体によっては、災害対策部局を市役所や町役場ではなく、24時間体制で活動できる消防本部に置いている場合もある。

2 災害時の実働機関

災害時には、自助や共助だけでは対応が難しい場合も多く、消防・警察・自衛隊などの実働機関による公助が重要な役割を担う。これらの機関は、合同訓練や情報共有を通じて連携を強化しており、防災基本計画では災害時に合同調整所を設置し、警察・消防・自衛隊などが協力して活動する体制が定められている。

(1)消防

消防には、消防本部・消防署(常備消防)と消防団(非常備消防)の2つの組織がある。いずれも市町村が設置・運営している。消防本部・消防署は主に市町村内で活動するが、消防業務の高度化に伴い、複数の市町村が共同で運営する広域消防体制が採られる場合も多い。大規模災害時には、都道府県内の相互応援や、都道府県を越えた緊急消防援助隊による広域支援が行われる。

緊急消防援助隊

緊急消防援助隊は、阪神・淡路大震災を契機として1995年に創設された広域消防応援の仕組みである。2004年からは、消防組織法に基づく制度として運用されている。東日本大震災では、延べ約10万人以上の消防隊員が派遣され、消火・救助活動、情報収集、原子力発電所への放水などに従事した。

消防団

消防団は、地域住民によって構成される消防組織であり、「非常備消防」とも呼ばれる。団員は普段は別の職業に従事しているが、災害時には消火活動や救助活動、避難誘導などを行う。消防団員は非常勤特別職の地方公務員であり、条例に基づき報酬や出動手当が支給されるほか、公務災害補償の対象となる。

近年は女性消防団員や学生消防団員の増加も進んでおり、防災教育や地域防災活動での役割が期待されている。

(2)警察

警察は、災害時に住民の生命・身体・財産を守り、公共の安全と秩序を維持する役割を担う。主な活動内容は、次のとおりである。

被害状況の把握
避難誘導
交通規制
犯罪の予防
緊急輸送路の確保
行方不明者の捜索

大規模災害時には、全国から警察部隊が派遣される。

警察災害派遣隊

警察災害派遣隊は、東日本大震災の経験を踏まえて整備された部隊である。
即応部隊と一般部隊に分かれ、避難誘導や救出活動、交通確保、遺体の検視などを行う。

(3)自衛隊

自衛隊は、大規模災害時における重要な支援組織であり、主に災害派遣として活動する。

要請による派遣

災害派遣は、原則として都道府県知事からの要請によって行われる。
市町村長は、知事に対して自衛隊派遣の要請を求めることができる。
緊急の場合には、防衛大臣の判断により、要請を待たずに派遣されることもある。

主な活動内容

自衛隊が行う主な災害支援活動は、次のとおりである。

行方不明者の捜索
被災者の救出
負傷者の搬送
道路や堤防の応急復旧
障害物の除去
人員・物資の輸送
空中消火
給食・入浴支援

(4)TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)

TEC-FORCEは、国土交通省が設置した技術支援チームである。
地震や水害、土砂災害などの大規模災害時に、被災自治体に対して技術的支援を行うことを目的としている。

主な活動は、次のとおりである。

被害状況の調査
応急復旧の技術支援
災害対策機材の提供

2024年4月現在、全国で約1万7千人の職員が任命されている。

(5)海上保安庁

海上保安庁は、海上における安全と治安を守る機関である。

主な業務は、次のとおりである。

海上犯罪の取り締まり
領海警備
海難救助
海洋環境保全
船舶の航行安全確保

大規模災害時には、海上での捜索・救助、物資輸送、被害状況の調査などを行う。
なお、海上での事故や事件の通報番号は118番である。

(6)災害派遣医療チーム(DMAT)

DMATは、災害時に被災地へ迅速に派遣される専門医療チームである。
大地震や航空機事故などで多数の傷病者が発生した場合、被災地に入り救急医療を実施するとともに、医療体制の確立を支援する。また、重症患者の広域搬送や医療機関の支援も重要な役割となっている。

(7)気象庁防災対応支援チーム(JETT)

JETTは2018年に創設された制度であり、大規模災害時に気象庁職員を自治体へ派遣する仕組みである。気象や気象警報に関する専門的な解説を行い、自治体の防災対応を支援する。

(8)その他の専門チーム

災害時には、医療や福祉などの分野で、さまざまな専門チームが派遣される。主なものは次のとおりである。

災害時に派遣される主な専門支援チーム
名称 主な役割・専門分野
DMAT 急性期の救急医療・広域搬送
DPAT 精神科医療・被災者の「心のケア」
TEC-FORCE インフラ復旧・被害状況の技術調査
DWAT / DCAT 避難所での福祉支援・高齢者介護

これらの専門チームは、医療・福祉・精神ケアなどの分野から被災者支援を行う。

まとめ

災害対応は、国・都道府県・市町村の行政組織が計画や調整を担い、消防・警察・自衛隊などの実働機関が現場で活動することで進められる。さらに、医療・技術・福祉などの専門チームが加わることで、多分野が連携する防災体制が構成されている。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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