地震に関する情報の理解
緊急地震速報
地震波と緊急地震速報のしくみ
地震が発生すると、地下から「地震波」と呼ばれる揺れが伝わってきます。
地震波には主に2種類があり、最初に到達するのがP波です。P波は秒速約7kmと速く伝わりますが、揺れ自体は比較的弱いのが特徴です。
その後に到達するのがS波で、速度は秒速約4kmとP波より遅いものの、強い揺れを伴います。
緊急地震速報は、このP波をいち早く観測することで、強い揺れ(S波)が到達する前に注意を呼びかける仕組みです。
緊急地震速報(警報)の続報について
緊急地震速報(警報)は、最初の情報が発表された後も、観測データの解析が進むことで内容が更新されることがあります。
発表後の解析によって、これまで警報の対象となっていなかった地域でも、震度5弱以上または長周期地震動階級3以上が予想された場合には、「続報」が発表されます。
この続報では、新たに強い揺れが予想される地域に加え、震度4が予想される地域についてもあわせて公表されます。
そのため、最初の速報だけでなく、続いて流れる情報にも注意を向けることが大切です。
地震の特別警報について
気象庁では、平成25年8月30日から「特別警報」の運用を開始しています。
緊急地震速報(警報)のうち、震度6弱以上が予想される場合、または長周期地震動階級3以上が予想される場合は、「特別警報(地震動特別警報)」として位置づけられています。
これは、通常の警報よりも特に重大な被害が想定される地震であることを示す情報です。
特別警報が発表された場合は、ただちに身の安全を最優先に行動する必要があります。
| 区分 | 震度 | 長周期地震動 | 行動 |
|---|---|---|---|
| 特別警報 | 震度7 震度6強/震度6弱 | 階級4 階級3 | 命を守る行動 |
| 警報 | 震度5強/震度5弱 | 階級2 階級1 | 身を守る行動 |
| 予報 | マグニチュード3.5以上 震度3以上の予想 | 階級1以上を予想 | 高度利用向け 列車や機器の制御に活用 |
余震について
大きな地震のあとには、余震と呼ばれる地震が何度も起こります。
余震は、本震で一度にずれ切らなかった断層があとから動いたり、周囲にたまった歪みが解放されたりすることで発生します。
一般に、最大の余震の規模は本震より少し小さいことが多く、本震がマグニチュード8であれば、マグニチュード7程度の余震に注意が必要とされます。また、地震の規模が大きいほど余震の回数も多くなり、時間の経過とともに徐々に減っていきます。ただし、その減り方や回数は地震ごとに大きく異なります。
最大余震が起こる時期にも目安があります。
内陸の地震では3日以内、海溝型地震ではおおむね10日以内に起こることが多いとされています。実際に、東日本大震災では本震の約30分後に大きな余震が発生しています。
注意したいのは、余震は本震より規模が小さくても、震源が近いと大きな被害につながることがある点です。本震で傷んだ建物は余震で倒壊するおそれがあり、救助活動や片付けの最中でも二次災害への警戒が必要です。
また、余震が多発している間は、観測が複雑になり、緊急地震速報の精度が一時的に下がることがあることも知っておきましょう。しばらくは慎重な行動を心がけることが大切です。
群発地震とは
はっきりした本震がないまま、地震が長期間くり返し発生することがあり、このような地震活動を 群発地震 と呼びます。
群発地震では、比較的小さな地震が多く起こり、活動が活発になったり静かになったりを繰り返しながら、数か月から数年にわたって続くこともあります。
群発地震は、火山活動に関連して起こることが多く、伊豆諸島やトカラ列島などでも、たびたび観測されています。一方、近年の能登半島周辺では、地下深くから上昇した水が岩盤の割れ目に入り込み、それが原因となって地震が続いていると考えられています。
また、能登半島周辺では、群発地震が続いたのちに最大震度7を観測する大地震が発生しました。
群発地震は一つ一つの揺れが小さくても、長期間にわたって続くことで不安や被害が積み重なる可能性があります。そのため、活動が続いている地域では、日頃からの備えと注意が重要になります。
誘発地震と火山噴火への影響
大きな地震が起こると、その揺れや地殻の変化の影響で、震源から離れた場所でも地震が起きやすくなることがあります。
このような地震を 「誘発地震」 と呼びます。
たとえば、2011年の東日本大震災の翌日には長野県栄村で、さらに3月15日には富士山の直下を震源とする地震が発生しました。また、3月23日以降は福島県浜通りなどで、強い揺れを伴う内陸地震が相次いで起きています。これらは、大地震によって地盤にかかる力のバランスが変わり、その影響で別の場所でも地震が発生したものと考えられています。
このような地震は「誘発地震」と呼ばれ、広い意味では余震の一種とみなされることもあります。また、誘発地震は地震の直後だけでなく、数年たってから起きることもあります。
過去には、1944年の東南海地震や1923年の関東地震のあと、数年にわたって内陸地震が続いた例もあります。
さらに、大地震は火山活動に影響を与えることもあります。
東日本大震災の直後には、東北から関東にかけて複数の火山周辺で、地震活動が一時的に活発化しました。歴史をさかのぼると、1707年の宝永地震の49日後に富士山が大噴火した例や、869年の貞観地震から2年後に鳥海山が噴火した例など地震と火山噴火の関連が疑われる事例もあります。
このように、大地震は広い範囲にわたって地震活動や火山活動に影響を及ぼす可能性があることを、理解しておくことが大切です。
プレート境界地震に伴うアウターライズ地震
海溝のすぐ外側、海側のプレートが持ち上がっている海域で発生する地震を「アウターライズ地震」と呼びます。
海洋プレートが陸側プレートの下へ沈み込む際、海溝の手前ではプレートが下向きに曲げられるため、プレート内部に強い力がかかり、地震が発生します。
アウターライズ地震は陸地から離れた場所で起こるため、陸上で感じる揺れは比較的小さいことが多いですが、震源が浅く、海底の大きな隆起や沈降を伴いやすいという特徴があります。そのため、地震の規模に比べて大きな津波を引き起こすことがあります。
このタイプの地震は、プレート境界地震の後に起こることが多いと考えられています。
例えば、1896年の明治三陸地震の後には、1933年に昭和三陸地震が発生しました。また、2011年の東北地方太平洋沖地震の後にも、震源域の沖合でアウターライズ地震とみられる地震が起き、2012年12月には三陸沖で地震が発生し、岩手県石巻市鮎川津波が観測されています。
このように、プレート境界地震の後には、沖合で大きな津波を伴う地震が起こる可能性があることにも注意が必要です。