災害時のメディア活用と情報の使い分け

災害情報と放送

災害情報提供手段としての放送の課題

2011年の東日本大震災では、発災直後の情報収集手段として、テレビやラジオ、防災行政無線といった放送メディアが広く利用された。特に、大津波警報や避難指示の伝達では、防災行政無線が有効に機能し、昼間の発災という状況もあって、屋外で避難している人への呼びかけとして重要な役割を果たした。

一方、被災地では広範囲で停電が発生し、多くの家庭で電源が使用できない状態となったため、テレビによる情報伝達は大きく制限された。避難中に車載テレビなどで情報を得た例もあるが、全体として十分に行き渡ったとは言い難い。

ただし、放送が避難行動につながった事例も確認されており、台風や豪雨時における気象情報や呼びかけの重要性は現在も変わらない。東日本大震災以降は、行動につながる伝え方の改善も進められている。

放送と多様なメディアの重要性

災害時の情報収集手段は、災害の規模や状況により大きく異なる。

東日本大震災では、防災行政無線やラジオ、口コミが中心であったのに対し、熊本地震では携帯電話やSNS、テレビの利用が多く見られた。熊本地震では、通信・放送設備の被害が比較的限定的で、復旧も早く、事前の停電対策や移動基地局の整備が影響している。

大規模災害では、発災直後は電源を必要としない防災行政無線やラジオが重要となり、その後、通信環境の回復に伴ってスマートフォンやインターネットの利用が増加する。

一方、小規模災害では、発災直後からスマートフォンやテレビ、インターネットが通常どおり利用されることが多い。

このように、有効な情報手段は状況に応じて変化するため、複数の手段を準備しておくことが重要である。(単一手段への依存は情報断絶のリスクを高める。)

災害時の主な情報メディア比較
メディア 得意なこと(長所) 弱点(注意点)
テレビ 映像による広域情報 停電時に弱い
ラジオ 停電に強く、地域密着 音声のみで状況把握
SNS・ネット 速報性と個別の安否 デマや誤報の混在
防災行政無線 屋外への一斉呼びかけ 雨や風で聞き取りにくい

災害報道から防災・減災報道へ

災害時の報道には、三つの役割がある。

第一に、災害の発生や被害状況、行政の対応などの事実を正確に伝える役割である。
第二に、防災機関としての役割であり、法令に基づき、災害の予防や被害軽減に資する情報を提供する責務を担っている。
第三に、過去の災害を検証し、その教訓を次に活かすための情報を伝える役割である。

ただし、教訓の伝達においては、結果論として個人の判断を過度に強調すると、被災者や遺族を傷つける可能性があるため、留意が必要である。そのため近年は、単なる記録や報道にとどまらず、具体的な行動につなげる「防災・減災報道」の重要性が高まっている。

災害情報とメディア

防災気象情報などの入手方法

(1)自治体からの情報

災害情報の収集や伝達、避難指示の発令は、自治体の重要な役割である。

主な手段として防災行政無線や広報車があるが、気象条件や建物の影響により、聞き取りにくい場合もある。

現在では、自治体のホームページやSNS、メール配信サービス、スマートフォンアプリなど、多様な手段で情報提供が行われている。

また、緊急地震速報や避難情報は、テレビやラジオ、携帯電話の緊急速報メールなどでも配信されている。

(2)ラジオ

コミュニティFMの役割
市町村単位で放送を行うコミュニティFMは、大手放送局がカバーしきれない「近所の給水所」や「特定の道路の冠水状況」など、極めて局地的な情報をリアルタイムで伝える強みがあります。

臨時災害放送局
災害時に自治体が臨時で開設する放送局です。避難所での生活情報や、行政からのきめ細かな支援情報を届けるため、被災者の孤立を防ぐ役割を果たします。

地域を救う「草の根」通信メディア
● コミュニティFM
「あそこの角が冠水している」「あのスーパーが営業再開した」といった、大手メディアが拾えない超ローカル情報を発信。
● 臨時災害放送局
避難所での「お風呂の時間」や「炊き出し情報」など、被災生活に直結する情報を放送。
● アマチュア無線
電話が繋がらない孤立地域から、救援要請や被害状況を外部へ繋ぐ「最後の通信手段」。

(3)インターネット

インターネットでは、自治体や報道機関のホームページ、SNSなどから幅広い情報を得ることができる。一方で、SNSでは誤情報が拡散されることもあるため、公的機関など信頼できる情報源で確認することが重要である。

災害時の情報発信

災害時には、SNSによる情報発信が増加する。

リアルタイムで共有できる利点がある一方、誤情報やデマの拡散リスクもあるため、情報の真偽を確認した上で、慎重に発信する必要がある。

また、通信環境は災害規模の影響を受けやすく、常に利用できるとは限らないため、複数の連絡手段を確保しておくことが重要である。

アマチュア無線の活用

アマチュア無線は、災害時の非常通信手段として活用されてきた。近年の制度改正により、災害時に限らず、地域活動やボランティア活動でも活用できることが明確化されている。

非常通信のプロとしての役割
携帯電話やインターネットが完全に遮断された「情報空白地帯」において、自前の設備と電源で通信を維持できるアマチュア無線家は、情報の伝達者として大きな力を発揮します。自治体と防災協定を結んでいるクラブも多く、孤立集落との連絡手段として期待されています。

SNSによる救助要請の注意点

災害時には、SNSで救助要請が行われることがあるが、実際に救助につながるケースは多くない。

不特定多数への投稿は、必ずしも救助機関に届くとは限らないためである。

そのため、まずは119番通報を行うことが基本である。電話が利用できない場合には、家族や知人に連絡し、代わりに通報してもらうなどの対応が有効である。

⚠️救助要請の基本は「119番」

SNSでの救助要請は、救助機関が常に監視しているわけではありません。まずは直接の通報を試み、困難な場合は信頼できる知人に個別に連絡し、代理通報を依頼してください。

まとめ

災害時の情報手段は、放送・通信・対面伝達など多様であり、災害の規模や状況によって有効性が変化する。複数の手段を組み合わせて情報を取得・発信し、状況に応じて適切に行動することが重要である。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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