介護・福祉のBCP義務化。未実施減算のリスク

3 事業継続計画の取り組み動向と策定目標

3-1 事業継続計画の実態

📊 企業のBCP策定状況(内閣府 2024年調査)
大企業(策定済み) 76.4%
中堅企業(策定済み) 45.5%

※策定中を含めると大企業は約86%、中堅企業は約58%に達する

内閣府が2024年1月から2月に実施した調査によると、企業における事業継続計画(BCP)の策定は着実に広がっている。策定済みの割合は、大企業で76.4%、中堅企業で45.5%となっている。

さらに、策定中の企業を含めると、大企業では約86%、中堅企業では約58%に達している。企業規模による差はあるものの、多くの企業でBCPの導入が進んでいることが確認されている。BCPは、企業のリスク管理の中核として位置づけられつつある。

3-2 事業継続計画の普及と課題

BCPの認知度と普及は、2011年の東日本大震災以降、大きく進んだ。災害による事業停止が社会や経済に与える影響が明確になったためである。

企業の事業継続力の向上は、災害時の事業継続だけでなく、従業員の雇用確保、サプライチェーンの維持、地域経済への影響の軽減などの観点からも重要とされている。

政府は2020年までの目標として、大企業ではほぼすべての企業でBCP策定、中堅企業では50%以上の策定を掲げていた。しかし、現時点ではこの目標は完全には達成されておらず、さらなる普及が課題となっている。

3-3 地方公共団体の業務継続計画

災害時には、行政機関も継続して業務を行う必要がある。そのため地方公共団体では、行政機能を維持するための業務継続計画(BCP)の整備が進められてきた。

策定状況は、都道府県では2016年度に100%を達成し、市町村(特別区を含む)でも2023年度に100%の策定が完了している。

今後は、災害発生時に他自治体からの応援職員を受け入れる体制を整えるため、「受援計画」の普及が重要とされている。

4 介護施設・福祉事業所におけるBCP策定と義務化への対応

介護・福祉サービスは、利用者の生命と生活を支える不可欠な社会基盤です。そのため、2021年の制度改正により、すべての介護・障害福祉サービス事業者に対してBCP(業務継続計画)の策定が義務化されました。

2024年度からは、計画の策定だけでなく、「職員研修の実施」および「定期的な訓練(シミュレーション)」の実施も完全義務化の対象となっています。これらを怠った場合、介護報酬の「運営未実施減算」が適用されるなど、実務上の大きなリスクを伴うこととなりました。

福祉施設のBCPにおいて最も重要なのは、インフラ停止時でも「食事・排泄・医療ケア」を24時間中断させないための具体的な手順です。自家発電装置の確保や、近隣施設との相互受け入れなどの「ネットワーク構築」が、利用者の命を守る鍵となります。

5 事業継続力強化計画

2019年7月に施行された中小企業強靱化法により、中小企業の防災・減災対策を支援する制度として「事業継続力強化計画」が創設された。

この制度では、中小企業が防災・減災のための計画を作成し、国の認定を受けることで、各種の支援措置を利用できる仕組みとなっている。

5-1 中小企業に最適な「事業継続力強化計画」

事業継続計画(BCP)は、本来、企業全体の複雑な復旧工程を網羅する総合的な計画です。しかし、経営資源の限られた中小企業にとっては策定のハードルが高いのが実情でした。

そこで、中小企業の防災・減災対策の「第一歩」として推奨されるのが、事業継続力強化計画です。これは、本格的なBCPを導入する前の「簡易版」として位置づけられており、策定ノウハウが不足している企業でも短時間で取り組みやすい、実践的な制度となっています。

5-2 認定を受けることで得られる実益(インセンティブ)

この計画を策定し、国の認定を受けることは、単なる防災対策以上のメリットを企業にもたらします。

  • 資金面: 防災・減災設備に対する特別償却(税制優遇)や、日本政策金融公庫による低利融資、信用保証枠の拡大。
  • ビジネス面: 認定ロゴマークの使用や企業名の公表による「信頼される企業」としてのブランド力向上。
  • 公的支援: 各種補助金(ものづくり補助金等)の審査における「加点措置」による優先採択。

防災を「コスト」ではなく、補助金獲得や信頼獲得のための**「戦略的投資」**に変換できる点が、この制度の大きな特徴です。

📢 組織別:今すぐ取り組むべき優先事項
【中小企業】事業継続力強化計画の認定
まずはハザードマップ確認と「人・物・金・情報」の整理から。補助金加点のメリット大。
【介護・福祉】義務化への対応と訓練
BCP策定に加え、2024年度からは「職員研修と定期訓練」の実施が報酬改定の必須要件。

5-3 計画に盛り込む主な内容

事業継続力強化計画では、防災・減災対策を中心に計画内容を整理する。

まず、事業を守ることだけでなく、従業員や取引先、地域経済への影響も考慮しながら、取り組みの目的を設定する。

次に、ハザードマップなどを活用して自社拠点の災害リスクを確認し、「人(従業員)」「物(建物・設備・在庫)」「金(資金繰り)」「情報(顧客データなど)」の四つの経営資源について整理する。

さらに、安否確認、人命確保、緊急体制の構築、被害状況の把握など、災害時の初動対応を定める。

加えて、経営資源ごとに防災・減災対策を検討し、防災マニュアルの作成・見直し、定期的な防災訓練、防災備蓄(最低3日分、できれば1週間分)などにより、計画の実効性を確保する。

5-4 企業連携による事業継続

中小企業が単独で実施できる防災対策には限界がある。そのため、企業同士の連携による事業継続の取り組みが重要とされている。

具体的には、取引先企業との協力、地元企業との連携、遠隔地の同業者との相互支援協定などが挙げられる。

このような企業間連携を進めることで、災害発生時においても事業継続の可能性を高めることができる。


まとめ

企業や行政、福祉分野では、災害時にも業務やサービスを継続するためのBCPの整備が進められている。特に中小企業では、事業継続力強化計画などの制度を活用することで、防災・減災対策に取り組みやすくなっている。今後は、企業単独の対策だけでなく、地域や企業間の連携を含めた事業継続体制の強化が重要となる。

※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください

※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。

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