持続可能な開発目標(SDGs)の理念
近年、防災を「持続可能な開発」の政策や計画に組み込むという国際的な流れが強まっています。大規模災害の経験を通じて、防災を社会の持続的な発展と一体的に進める必要性が認識されてきたためです。防災は単なる災害対応ではなく、社会の持続性を支える政策課題として位置づけられつつあります。
2015年3月には、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県仙台市で、第3回国連防災世界会議が開催されました。約190か国の代表が参加したこの会議では、国際的な防災指針となる仙台防災枠組と、その成果をまとめた仙台宣言が採択されました。
さらに同年9月、国際連合総会において「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択されました。この中で、2016年から2030年までの15年間で達成を目指す国際目標として、持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。
外務省は、SDGsについて次のように説明しています。
「持続可能な開発目標(SDGs)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年の国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に記載された国際目標です。2016年から2030年までを期間とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。『誰一人取り残さない(leave no one behind)』という理念のもと、先進国・途上国を問わずすべての国が取り組む普遍的な目標です。」
災害からの避難や災害後の生活維持、復興の過程では、乳幼児、高齢者、女性、障害者、外国人などの災害時要配慮者が大きな影響を受けることがあります。日本では、阪神・淡路大震災以降、防災分野においてこうした人々への配慮を強化する取り組みが進められてきました。
SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という理念は、防災政策や防災活動においても重要な考え方です。災害への備えや復興を進める際には、この理念を社会全体で共有していくことが求められています。
災害ケースマネジメント
災害ケースマネジメントとは
災害ケースマネジメントとは、被災者一人ひとりの被災状況や生活状況を把握し、それぞれの課題に応じた支援を行う取り組みです。
具体的には、個別相談などを通じて被災者の状況を確認し、必要に応じて福祉、医療、住宅、就労などの専門的な支援機関と連携しながら、課題解決を継続的に支援します。こうした支援を通じて、被災者の自立と生活再建を進めていくことが目的です。
被災地での課題
大規模災害の被災地では、被災者を取り巻く状況が複雑化することがあります。実際には、次のような課題が生じる場合があります。
自分から支援を求めることができない被災者がいる
在宅避難者の増加
支援が届かない人の発生
被災者が抱える課題の多様化
行政だけでは対応が難しい問題の存在
その場限りの対応では課題が解決しない場合がある
被災者一人ひとりに寄り添った支援が必要になる
このように、被災者の状況はそれぞれ異なるため、一律の支援だけでは十分に対応できない場合があります。
災害ケースマネジメントの効果
こうした課題に対応するため、災害ケースマネジメントの取り組みが進められています。この取り組みにより、次のような効果が期待されています。
災害関連死の防止
避難所以外の避難者への支援
支援漏れの防止
被災者の自立と生活再建の早期実現
地域社会の活力維持への貢献
現在、内閣府では地方公共団体の担当者向けに「災害ケースマネジメント実施の手引き」を活用した研修を実施し、先進的な自治体の事例や民間団体との連携方法を紹介しています。こうした取り組みによって、災害ケースマネジメントの普及と実践が進められています。
まとめ
防災は、単なる災害対応ではなく、社会の持続的な発展と深く関わる政策課題として位置づけられています。SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という理念は、防災の分野においても重要な考え方です。また、大規模災害の被災地では、被災者の状況に応じた個別支援が必要となるため、災害ケースマネジメントの取り組みが重要になります。こうした考え方を共有し、社会全体で防災と復興の取り組みを進めていくことが求められています。
※本ページは、防災・減災に関する基礎的な情報を、一般の方にも分かりやすく整理したものです。
災害時の判断や行動は、地域や状況によって異なるため、必ず公的機関からの最新情報を優先してください
※本ページは『防災士教本(2025年度版)』(日本防災士機構)を参考に再構成しています。
