トリアージ――災害時、治療の優先順位はどう決まる?

医療

前回の記事では、災害が起こると、病院や医療従事者、薬や医療機器など、医療を支える資源にも限りがあることを紹介しました。では、たくさんの人が同時にケガをしてしまったら、どうなるのでしょうか?すべての人を、来た順番に診察すればよいのでしょうか?

実は、災害時の医療では、限られた時間や人員、設備などを有効に使うために、治療や搬送の優先順位を判断することがあります。

そこで重要になるのが、「トリアージ」という考え方です。

今回は、災害時の医療で行われるトリアージについて、できるだけ分かりやすく見ていきましょう。

トリアージとは?

日本では、阪神・淡路大震災をきっかけに、災害時の医療体制の整備が進められ、トリアージの重要性も広く認識されるようになりました。

災害現場では、普段の医療とは異なり、多くの傷病者に対して、限られた医療資源で対応しなければならないことがあります。

そのため、すべての人を同じように診察するのではなく、傷病者の状態を確認し、治療や搬送などの優先順位を判断する必要があります。

これは、誰かを見捨てるためのものではありません。

限られた医療資源の中で、できるだけ多くの命を救うために、「救える命を救う」ことを目的として行われます。

災害時には、傷病者の緊急度や重症度などを短時間で判断し、その時点で必要な対応を決めていきます。

しかし、トリアージは一度行ったら終わりというものではありません。

時間が経つにつれて、体調や病状が変化することがあります。

そのため、状況に応じて繰り返しトリアージを行い、その時点での状態に合わせて治療や搬送の優先順位を見直すことがあります。

また、トリアージの方法や判断は、傷病者の数や医療従事者の人数、活動する場所、災害の状況などによって変わります。

そして、複数の救急隊や医療関係者が活動する災害現場では、傷病者の状態や判断結果を共有することも重要になります。

そこで使われるものの一つが、「トリアージタッグ」と呼ばれる札です。

トリアージタッグとは?

トリアージタッグは、傷病者の状態や治療・搬送の優先順位を記録し、医療関係者などの間で情報を共有するために使われます。

手首や足首などに取り付けられ、治療や搬送の優先度に応じて、赤・黄・緑・黒の4色に分けて表示されます。

ただし、色は病気やケガの種類そのものを表しているわけではありません。

その時点での傷病者の状態をもとに、どの程度の緊急性があるのか、治療や搬送をどの程度優先する必要があるのかを示すものです。

トリアージタッグの色の意味

赤:第一優先
生命に関わる危険な状態で、緊急に治療が必要と判断された人です。たとえば、大量の出血や重い呼吸障害、ショックなど、すぐに処置を行わなければ生命に関わる可能性がある状態が挙げられます。

黄:第二優先
緊急性はありますが、赤色の人と比べると、治療を行うまでにある程度の時間的な余裕があると判断された人です。ただし、状態が変化することもあるため、必要に応じて再びトリアージを行います。

緑:第三優先
比較的軽症で、緊急性が低いと判断された人です。歩いて移動できる程度の軽い外傷などが該当することがあります。

黒:第四優先
生命兆候がない、または現時点で救命が難しいと判断された人です。災害現場で限られた医療資源をどのように使うかという判断の中で付けられる分類であり、黒色になったからといって、「何もしない」という単純な意味ではありません。

災害現場で限られた医療資源をどのように使うかという、非常に難しい判断の中で付けられる分類です。なお、トリアージの判断は、その人の状態や現場の状況などを総合的に見て行われます。

そのため、「このケガなら必ずこの色」と決まっているわけではありません。また、一度付けられた色が、その後もずっと同じとは限りません。状態が変化すれば、再びトリアージを行い、優先順位が見直されることもあります。

災害時のトリアージは、限られた医療資源の中で、一人でも多くの命を救うために行われる重要な判断です。普段はあまり聞きなじみのない「トリアージ」という言葉ですが、災害時の医療を知るうえで、覚えておきたい言葉の一つです。

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