防災士の歴史
1995年の阪神・淡路大震災では、多くの人命が失われました。この災害では、消防・警察・自衛隊などの公的機関による救助活動にも、物理的な限界があることが浮き彫りとなりました。
被災直後は、道路の寸断や通信障害によって救助隊が現場へ到着できず、広範囲で同時に救助要請が発生したことで、公的機関だけでは十分に対応できない状況となりました。また、救助活動を行う職員自身やその家族も被災者となる場合があり、災害対応機能そのものが低下するケースもありました。
そのような中で、多くの命を救ったのが、近隣住民による助け合いでした。
この経験から、「地域の防災力」の重要性が広く認識されるようになり、住民一人ひとりが防災知識を持ち、地域や職場で協力しながら活動できる仕組みとして、「防災士制度」が誕生しました。
防災士に期待される役割
防災士には、日頃から防災意識を持ち、一定の知識や技能を備えた「地域の防災リーダー」として活動することが求められています。自分の家庭や職場、地域で「何ができるのか」「何をすべきか」を主体的に考え、周囲と協力しながら行動することが重要です。
また、防災士は個人で活動するだけではなく、地域住民、自治会、学校、企業、行政など、防災に関わるさまざまな人や団体をつなぐ役割も担っています。そのためには、日頃から地域の人々や防災関係者との「顔の見える関係」を築いておくことが大切です。
防災士に求められる防災の基本「自助・共助・公助」
自助:すべての出発点は「自分の命を守る」こと
防災の基本は、「自分の命は自分で守る」という「自助」の考え方です。
自分自身が無事でなければ、家族や地域の人を助けることはできません。そのため、防災士には「助けられる人」ではなく、知識と技能を備えた「助ける人」として行動することが求められます。
まずは、住宅の耐震化、家具の転倒防止、備蓄、避難経路の確認など、自分自身と家族の安全を守る備えから始めることが重要です。
共助:地域で助け合い、被害の拡大を防ぐ
大規模災害では、公的機関だけですべてに対応することは困難です。そのため、地域住民同士が助け合う「共助」が重要になります。
初期消火や倒壊家屋からの救助は時間との戦いであり、消防隊が到着するまでの間に、近隣住民による対応が命を左右する場合があります。
東日本大震災では、日頃から防災教育を受けていた児童・生徒が自ら避難し、その行動が周囲の大人たちの避難にもつながった「釜石の出来事」が知られています。
一方で、都市部では地域コミュニティの希薄化も課題となっています。そのため、防災士には、プライバシーに配慮しながら、地域での「顔の見える関係」を築く役割も期待されています。
公助:行政による救助とインフラ整備
「公助」とは、国や自治体などによる公的支援のことです。
消防・警察・自衛隊による救助活動、避難所の開設、救援物資の配布などの緊急対応に加え、道路や通信網の耐震化、学校施設の補強、木造密集地の再整備なども公助に含まれます。また、気象庁や大学などによる災害研究や観測、防災情報の発信も重要な役割を担っています。
防災士には、こうした公助の仕組みを理解したうえで、行政と地域住民をつなぐ「橋渡し役」として活動することも期待されています。
防災士の具体的な活動例
防災士は、地域の防災訓練や避難所運営支援だけでなく、防災講座や防災教育、企業の防災活動支援など、さまざまな場面で活動しています。
近年では、自治体が防災士を地域防災の担い手として位置付ける例も増えており、防災士同士のネットワークづくりも進められています。
※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』を参考に、一般の方にも分かりやすく再構成したものです。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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