災害医療とトリアージ

災害医療とは

災害医療の中心的な目的は、「救うことのできる命を救うこと」にあります。

大規模災害では、地震や津波などによって病院や道路、通信などの社会インフラそのものが被害を受けることがあります。また、被災地域では多数の負傷者が同時に発生するため、地域の医療機関だけでは対応が困難になる場合があります。

そのため、災害時にはDMAT(災害派遣医療チーム)などによる広域支援や、限られた医療資源を有効に活用するための「トリアージ」が重要となります。

さらに、在宅医療を受けている人への支援や、避難所での感染症対策・衛生管理なども、災害医療の重要な役割のひとつです。

災害派遣医療チーム(DMAT)

DMAT(災害派遣医療チーム)は、大規模災害や航空機・列車事故などで、多数の傷病者が発生した際に、被災地へ迅速に派遣される専門医療チームです。

地震などの大災害では、被災地の医療機関だけでは対応が困難になる場合があります。
そのため、DMATは発災直後から被災地に入り、救命治療や患者搬送、医療機関の支援などを行います。また、消防・警察・自衛隊・自治体・医療機関などと連携しながら活動することも重要な役割です。

災害拠点病院の現状と課題

災害拠点病院とは、大規模災害時に重症患者の受け入れや救命医療の中心となる病院です。
全国では、2024年時点で776の病院が指定されており、自家発電設備や医療資機材の備蓄、DMATの保有などが求められています。しかし、災害拠点病院そのものが被災する可能性もあります。

実際に、周辺道路の冠水や土砂災害によって患者の受け入れが困難になるケースや、停電・断水によって医療機能の維持が難しくなるケースも指摘されています。また、東日本大震災では、通信回線の途絶により、病院の被災状況や受け入れ可能人数などの情報共有が十分に行えない事例も発生しました。

このため近年では、衛星電話や衛星インターネットなど、通常の通信網が使えなくなった場合でも情報共有を継続できる体制整備が進められています。

トリアージ

トリアージは、フランス語の「trier(選り分ける)」に由来する言葉です。

災害現場では、医療資源や医療従事者が限られているため、すべての傷病者を同時に治療することはできません。そのため、傷病者を重症度や緊急度に応じて分類し、救命可能性の高い人から優先的に治療を行う必要があります。

このように、限られた医療資源を有効に活用するため、短時間で傷病者の優先順位を判断する仕組みを「トリアージ」といいます。

トリアージでは、一般的に4色のトリアージタグが使用されます。

トリアージタッグの4色分類
最優先治療
生命に関わる重篤な状態。直ちに処置が必要。
準緊急治療
数時間は待機可能だが、早期に治療が必要。
軽症
歩行可能。専門的な緊急処置を直ちに要さない。
非緊急・死亡
既に死亡、または救命の可能性が極めて低い。

また、災害時には、子ども(Child)、女性(Woman)、高齢者(Aged)、障害者・要配慮者(Patient)などへの特別な配慮も重要とされています。これらは「CWAP(シーワップ)」と呼ばれ、避難生活や医療支援の場面で優先的な支援が求められます。

※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』を参考に、一般の方にも分かりやすく再構成したものです。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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