生活インフラと災害

電力

地震や台風、豪雨、豪雪などの災害では、送電線や電柱、変電設備などが被災することで停電が発生します。

停電が起きると、照明だけでなく、冷蔵庫、エアコン、通信機器、給水ポンプなども停止し、生活に大きな影響を与えます。特にマンションでは、断水やエレベーター停止が同時に発生する場合もあります。

また、大規模災害では広い範囲で設備が被災するため、復旧までに数日から数週間かかるケースもあります。

そのため、停電時の行動や復旧の仕組みを理解するとともに、家庭での備えを平常時から進めておくことが重要です。

家庭でできる停電・電気火災対策

地震や台風、豪雨、豪雪などの災害では、変電設備や送電線、電柱などが被災し、停電が発生することがあります。停電時には、火災や感電などの二次災害にも注意が必要です。

特に、停電復旧時には、倒れた電気ストーブや破損した配線などから出火する「通電火災」に注意が必要です。停電が発生した時には、まずは、身の安全を確保したうえで、次のような行動を心がけましょう。

・強い揺れを感じたら身の安全を確保し、その後電気器具のスイッチを切りプラグを抜く。
・熱源の近くに燃えやすいものが無いか確認する。
・電気器具が燃えた場合は水をかけず、ブレーカーを切ったうえで消火器を使用する。
・災害時の避難ではエレベーターを使用しない。
・避難時には分電盤のブレーカーを切る。
・切れて垂れ下がった電線には絶対に触れない。
・壊れたり水につかった電気器具は使用しない。

普段から停電に備え、懐中電灯、モバイルバッテリー、携帯ラジオなどを準備しておくことで、災害時にも落ち着いて行動しやすくなります。

電力会社の復旧と災害対策

電力会社では、地震や台風などの災害に備え、設備の耐震化や定期的な保守点検を行い、被災しにくい設備づくりを進めています。

また、24時間体制で電力設備を監視し、電力を別ルートから送る仕組みや、自動的に事故区間を切り離す設備を導入することで、停電範囲の縮小や早期復旧に取り組んでいます。

(電気が家庭に届くルートと遮断の仕組みのイメージ図:自動制御スイッチ開閉器)

大規模災害時には、病院、消防、警察、避難所など、人命に関わる重要施設から優先的に復旧作業が行われます。そのため、一般家庭では停電が長期化する場合もあります。

そのため、各家庭でも数日程度の停電を想定した備えが重要になります。

都市ガス

地震時にガスはどう止まるか

都市ガスは、地中に埋設されたガス管を通じて各家庭へ供給されています。
大きな地震が発生すると、ガス漏れや火災などの二次災害を防ぐため、地域単位または家庭単位でガスの供給を停止する仕組みがあります。

家庭では、震度5程度以上の揺れを感知すると、ガスメーター(マイコンメーター)が自動的にガスを遮断します。また、都市ガス会社でも、地震計の情報やガス管の圧力変化などを監視し、被害が大きい地域では区域単位で供給を停止する場合があります。

災害時の行動

ガス使用中に地震が発生した場合は、まず自分の身の安全を最優先に行動します。

小さな揺れで安全に行動できる場合は火を消しますが、強い揺れの最中に無理をして火の近くへ行くのは危険です。揺れがおさまった後に、器具栓や元栓を閉めましょう。

揺れがおさまった後は、次の点を確認します。

  • ガス臭がしないか
  • ガス機器や排気設備が破損していないか
  • ガスホースや接続部分が外れていないか

ガス臭を感じた場合は、ガス栓を閉め、窓や戸を開けて換気を行いましょう。
この時、換気扇や照明などの電気スイッチには触れないでください。スイッチ操作時の火花によってガスへ引火する危険があります。

また、ガス機器に異常がないにもかかわらずガスが出ない場合は、ガスメーター(マイコンメーター)が自動的にガスを遮断している可能性があります。

その場合は、ガスメーターの復旧操作を行うか、ガス会社からの供給停止情報を確認したうえで対応しましょう。復旧操作を行ってもガスが使用できない場合は、無理に使用せずガス会社へ連絡しましょう。

平常時の備え

災害時に慌てず行動できるよう、日頃から次の点を確認しておくことが大切です。

  • ガスメーターの設置場所
  • マイコンメーターの復帰方法
  • ガス栓や元栓の位置
  • ガス会社の緊急連絡先

集合住宅では、複数のメーターがまとめて設置されている場合があるため、自宅のメーターの位置を事前に確認しておくと安心です。

また、ガス機器やガスホースの劣化、ゆるみ、ひび割れなどがないか、定期的に点検することも重要です。

都市ガス事業者の災害対策

都市ガス事業では、「予防」「緊急対応」「復旧」の3段階で災害対策が行われています。

予防

被害を減らすため、耐震性の高いガス管への更新や、設備の耐震化が進められています。

緊急対応

地震発生時には、二次災害を防ぐため、地域単位や家庭単位でガス供給を自動停止する仕組みが導入されています。

復旧

被害状況を確認しながら、安全を最優先に復旧作業が行われます。また、大規模災害時には、全国のガス事業者による相互応援体制によって復旧支援が行われます。

復旧の流れ

供給停止地域では、ガス漏れの有無を確認したうえで、段階的に供給再開が行われます。

漏れがある状態で供給を再開すると、火災や爆発につながる危険があるため、安全確認を行いながら慎重に復旧作業が進められます。

また、ガス漏れが確認された場合には、道路の掘削やガス管の交換作業が必要になるため、復旧までに時間を要する場合があります。

都市ガスの復旧は、安全確保と効率性の観点から、

  • 被害が比較的軽い地域
  • ガス供給の上流側

から順に進められます。

病院や避難所など公共性の高い施設では、移動式ガス発生設備などによる臨時供給が行われることもあります。

復旧状況については、ガス会社がテレビ・ラジオ・広報車・ホームページなどを通じて、供給停止区域や復旧見込みを公表します。災害時には、これらの情報を確認することが重要です。

LPガス

LPガスの特徴と安全装置

LPガスは、都市ガスのようなパイプラインではなく、住宅や施設に設置されたLPガス容器(ボンベ)やバルク貯槽から個別に供給される仕組みです。

この分散型の供給方式により、都市ガスのように地域全体で供給が停止する可能性は比較的低く、災害時にも利用しやすいエネルギーとされています。エネルギー基本計画では、「災害時エネルギー供給の最後の砦」と位置づけられています。

また、LPガスは避難所の炊き出しや非常用電源などにも活用されています。


LPガスマイコンメーター

LPガスマイコンメーターは、ガス使用量を計測するだけでなく、安全管理機能を備えた保安ガスメーターです。ガス流量や圧力の異常を監視しており、危険と判断した場合には自動的にガス供給を遮断します。また、震度5相当以上の揺れを感知した場合にも、自動停止する仕組みがあります。

遮断された場合は、復帰ボタンによって再開できる場合があります。ただし、配管や機器に異常がある場合は再び遮断され、安全が確保される仕組みになっています。


災害後の点検と復旧

災害後は、需要家自身が復帰操作を行い、復帰できない場合はLPガス事業者が安全確認や点検・復旧を行います。

災害時の行動と平常時の備え

地震時

・揺れがおさまってから器具栓や元栓を閉める
・揺れが大きい場合は容器バルブも閉める
・ガス臭がある場合は、すべてのバルブを閉め、LPガス販売店へ連絡する

火災時

・容器バルブを閉める
・消防隊にLPガス容器の位置を知らせる

台風・洪水時

・容器バルブを閉める
・容器の固定状態を確認する
・浸水のおそれがある地域では、チェーンを二重にするなどの対策を行う

平常時の確認

・容器やガスメーター周辺を整理する
・容器バルブの閉め方(右回し)を確認する
・集合住宅ではメーターバルブの位置を把握する
・容器がチェーンなどで固定されているか確認する
・落下物になりやすい物を周囲に置かない

固定が不十分な場合は、LPガス事業者へ相談しましょう。

上下水道

災害時に上下水道はどうなるか

大規模な災害が発生した際、ライフラインの中でも復旧に時間を要するのが「水道」です。

水道は、水源から浄水場、そして道路下の配水管を通じて各家庭へ届けられています。しかし、地震では、この配水管の継ぎ手部分が外れたり、破損したりする被害が多く発生します。
特に水道管は地中に埋設されているため、漏水箇所の特定や修理には道路の掘削作業が必要となり、復旧には時間がかかります。

過去の大規模地震では、発災から数日間断水が続き、地域によっては完全復旧まで数週間から1か月程度かかるケースもありました。

また、下水道が使用できなくなると、トイレや排水が使えなくなり、避難所や自宅の衛生環境は急速に悪化します。特に、トイレの不衛生や排泄の我慢は、脱水症状や体調悪化など、深刻な健康被害につながるおそれがあります。

上水道:家庭でできる「水の備え」

地震などの大規模災害では、自治体や水道事業者も被災している可能性があり、給水支援が本格化するまでには時間がかかります。特に夜間や休日に発災した場合は、初動対応が遅れることもあるため、まずは「最初の3日程度」を自力で乗り切る備えが重要とされています。

飲料水は、一般的に「1人1日3リットル」を目安に、最低3日分、可能であれば1週間分程度の備蓄が推奨されています。
なお、備蓄する飲料は水を基本とすることが推奨されています。災害時には飲用だけでなく、手洗いや簡易清掃、食器洗浄などにも使用するため、お茶やコーヒーなどでは代用しにくい場面があります。

また、災害時には飲み水だけでなく、

  • 手洗い
  • 簡易清掃
  • トイレ洗浄

などの生活用水も必要になります。

市販のペットボトル飲料の備蓄に加え、水道水の汲み置きや、浴槽へ残り湯をためておくことも有効です。災害時には自治体による応急給水が行われる場合もあるため、給水所の場所を平常時から確認しておくことも重要です。

下水道 トイレ問題への自己防衛

地震後は、下水道や建物内の排水管が破損している可能性があります。
そのため、浴槽の残り湯や汲み置きの水があっても、安全確認が行われるまでは、原則としてトイレを流さないようにしましょう。排水管が破損している状態で流すと、汚水漏れや階下への逆流などが発生する危険があります。

携帯トイレの備蓄

1日のトイレ回数は個人差がありますが、一般的に5〜7回程度とされています。
4人家族が1週間過ごす場合、約140回分の携帯トイレが必要になります。

あわせて備えておきたい物

・トイレットペーパー(4人家族で16ロール程度が目安)
・新聞紙
・ポリ袋
・消臭剤
・厚手のウェットティッシュ

集合住宅(マンション)特有の断水リスク

マンションなどの集合住宅では、戸建て住宅とは異なる断水・排水リスクがあります。

停電による断水

受水槽からポンプで各階へ給水している場合、水道管に異常がなくても、停電だけで水が止まる場合があります。

配管確認前の「流し」禁止

地震直後、水が出るからといって安易にトイレを流してはいけません。建物内の排水管が破損している場合、階下の部屋で汚水が逆流・漏水する危険があります。安全確認が行われるまでは、管理会社などの指示に従い、携帯トイレを使用しましょう。

給水所利用時のポイント

断水が長引くと、給水車や応急給水所を利用する場合があります。
ポリタンクを手で運ぶと大きな負担になるため、キャリーカートやリュック型給水袋などを活用すると移動しやすくなります。
また、自治体によっては住所確認を求められる場合もあるため、身分証のコピーなどを防災ポーチへ入れておくと安心です。

水道・下水道事業者の災害対策

水道局や下水道事業者では、災害時でもライフライン機能を維持するため、施設や配管の耐震化、停電対策、応急給水体制の整備などを進めています。

上水道の対策

・浄水場や給水施設の耐震化
・停電時でも給水を継続する非常用発電設備の整備
・揺れに強い「耐震継手」を備えた水道管への更新
・公園や学校への応急給水槽の設置

下水道の対策

・液状化によるマンホール浮上防止対策
・水再生センターやポンプ所の耐震化
・停電に備えた非常用発電設備の整備
・複数の電源確保によるバックアップ対策

※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』を参考に、一般の方にも分かりやすく再構成したものです。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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