地震による被害は、建物の倒壊だけではありません。ライフラインの停止や火災、液状化、土砂災害など、さまざまな被害が発生することがあります。被害の特徴を知ることは、防災対策を考える第一歩です。ここでは、地震によって発生する主な被害について解説します。
建築物・土木構造物の被害
過去の地震の経験をもとに、建物の耐震基準は何度も見直されてきました。そのため、古い建物と比べると、現在の建物は比較的被害が少なくなっています。しかし、大きな地震では、電気・ガス・水道などのライフラインが停止することがあります。さらに、住宅や道路、橋などが損傷・倒壊することもあります。
阪神・淡路大震災では、10万棟以上の住宅が全壊し、ビルの1階や中間階がつぶれる被害も発生しました。高速道路の高架が横倒しになるなど、多くの被害が確認されています。また、地震による断層運動で地面が大きくずれたり、隆起することがあります。
能登半島地震では、地盤の隆起によって漁港が使用できなくなる被害も発生しました。また、室内では家具や家電の転倒・移動による怪我も多く発生しました。普段から家具の固定や寝室・避難経路の配置を見直すなど、自分でできる安全対策を進めておくことが大切です。
広域火災の被害
地震によって火災が発生すると、広範囲に被害が広がることがあります。
地震発生直後は、建物の倒壊や停電、断水、道路の寸断などが同時に発生するため、通常の火災よりも消火活動が難しくなります。また、複数の場所で同時に火災が発生すると、消防力が不足し、大規模な延焼につながる危険があります。さらに、強風時には火災の延焼速度が急激に高まることがあります。
関東大震災では、強風の影響で「火災旋風」と呼ばれる渦巻き状の火柱が発生しました。また、東日本大震災では、津波で流されたLPガスボンベが建物などに衝突し、ガス漏れによって火災が発生した事例も確認されています。
近年では、「通電火災」にも注意が必要です。
通電火災とは、停電後に電気が復旧した際、電熱機器の周囲に可燃物があることで発生する火災です。地震発生時にストーブや電熱器具を使用していた場合は、周囲に洗濯物などの燃えやすい物がないか確認しましょう。また、避難時にはブレーカーを落とし、停電復旧後に機器が自動で作動しないようにすることも大切です。
火災旋風(かさいせんぷう)
大規模な火災が発生すると、「火災旋風」と呼ばれる渦巻き状の激しい火災現象が発生することがあります。巨大な炎によって熱せられた空気が急上昇し、その周囲から強い風が流れ込むことで、炎を伴った渦が発生すると考えられています。
火災旋風が発生すると、炎や火の粉が周囲へ一気に広がり、避難が極めて困難になる場合があります。また、強い風によって建物被害が拡大することもあります。
関東大震災では、市街地で複数の火災旋風が発生し、多くの犠牲者が出たとされています。
輪島市大規模火災
2024年の能登半島地震では、石川県輪島市で大規模な火災が発生しました。
地震による建物被害やインフラ障害が重なる中で、火災の延焼が長時間続いたことが特徴です。
地震後の火災では、次のような問題が同時に発生しやすくなります。
- 消火活動が困難になる
- 道路寸断で消防車が近づけない
- 断水によって十分な放水ができない
といった問題が同時に発生しやすくなります。
この火災は、「地震そのもの」だけでなく、「地震後に発生する火災」への備えも重要であることを示した事例といえます。
斜面崩壊(地滑り・がけ崩れ)
地震の揺れで山の斜面が崩壊し、住宅地や道路を土砂で覆うことがあります。
山沿いでは、建物の倒壊や道路の寸断によって、孤立集落が発生したり、人命救助が遅れることもあります。
過去の地震では、広い範囲で斜面崩壊が発生しました。
- 2004年 新潟中越地震
約3,800か所の斜面崩壊が発生。地滑り地帯が多い地域で被害が目立ちました。 - 2008年 岩手・宮城内陸地震
約3,500か所で斜面崩壊が発生。中山間地域の過疎・高齢化の問題も浮き彫りになりました。 - 2018年 北海道胆振東部地震
前の台風による降雨で地盤が緩み、厚真町などで表面の地盤が崩れる災害が発生しました。
山体崩壊・岩屑なだれ
山が崩れる「山体崩壊」は、大きな地震だけでなく、噴火や火山活動でも見られる現象です。
崩壊する場所や規模を事前に予測することが難しく、人の力では食い止められない大規模な地盤災害です。
例えば、1984年の長野県西部地震(M6.8)では、御岳山の尾根部分から山体が崩壊しました。
この時は、大規模な「岩屑なだれ」も発生し、崩れた土砂は谷を破壊しながら約10km流下したと言われています。
岩屑なだれは、空気を巻き込みながら高速で流れるため、通常の土石流より摩擦が少なく、破壊力が大きいのが特徴です。
雪の多い地域では、このような複合災害が発生することもあります。
液状化現象
液状化とは、地震の強い揺れによって地盤が液体のようになり、建物や道路が傾いたり沈んだりする現象です。地中の砂と水のバランスが崩れることで発生し、砂地の多い埋立地や沿岸部、河川下流部などで起こりやすい特徴があります。
液状化が発生すると、避難や緊急車両の通行にも大きな影響が出ます。
そのため、住宅や施設の建設時には、地盤改良や支持杭の設置などの対策が重要になります。
阪神・淡路大震災では、人工島のポートアイランドが大規模に液状化し、地震直後はまるで洪水のような状態になりました。
東日本大震災では、千葉県浦安市をはじめ広い範囲で住宅の傾きや地面の陥没が発生しました。
また、能登半島地震でも、内灘砂丘や河北潟周辺で液状化による住宅被害が確認されています。
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※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』などを参考に、当サイトの視点で再構成・解説しています。
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