避難生活とPTSD

避難生活と健康被害

災害直後は、けがや骨折などの外傷患者への対応が中心となります。しかし、時間の経過とともに、避難生活による体調悪化や持病の悪化、感染症などへの対応が重要になります。

特に避難所では、インフルエンザや感染性胃腸炎、食中毒などが発生する可能性があり、衛生管理や十分な換気が重要です。

また、感染症と同じくらい注意が必要なのが「エコノミークラス症候群」です。車中泊や狭い避難スペースなどで長時間同じ姿勢を続けることで血栓ができやすくなり、血管が詰まることで重症化する場合があります。過去の震災でも、発見の遅れによって死亡した事例が報告されています。

そのため、こまめな水分補給や、足首・ふくらはぎを動かす軽い運動、適度な歩行などが推奨されています。さらに、高齢者や持病のある人は、長期の避難生活によって体力が低下し、災害関連死につながる場合もあります。

トラウマ(心的外傷)

強い恐怖や生命の危険を伴う出来事を体験すると、その記憶が後になっても繰り返し思い出され、強い苦痛を感じることがあります。このように、強い出来事によって心に深い影響が残る状態は、「トラウマ(心的外傷)」と呼ばれます。

災害や事故、事件などのあとには、心や身体にさまざまな反応が現れることがあります。症状の強さや続く期間には個人差があり、置かれた環境や性格などによっても変化します。

心理面では、不安、抑うつ、怒り、無力感、悲しみなどの感情の変化がみられます。
身体面では、不眠、食欲不振、動悸、ふるえ、発汗、呼吸困難、口の渇きなどの症状が現れることがあります。
また、行動面では、人との接触を避けるようになったり、他者への信頼を失ったり、孤立感や疎外感を抱くこともあります。これらの反応によって、日常生活や社会生活に支障が生じる場合があります。

こうした症状が強く長期間続く場合は、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と診断されることがあります。一方、災害直後などにみられる短期間の強いストレス反応は、「ASD(急性ストレス障害)」と呼ばれます。

職業的救援者のストレス

災害による心理的負担は、被災者だけでなく、医療関係者や消防、自衛隊など、救援活動に関わる人々にも生じることを理解しておく必要があります。

救援者は、遺体の目撃や悲惨な現場への対応、トリアージによる重大な判断、被災者の苦しみに向き合う状況に置かれます。

さらに、自分自身も被災していたり、家族の安否が分からないまま活動を続ける場合もあります。このような状況は大きな精神的負担となり、PTSDなどのストレス障害につながることがあります。そのため、職業的救援者は「隠れた被災者」と呼ばれることもあります。

家族と地域のこころのケア

災害後の心理的な回復には、家族や地域社会の中で支え合うことが大切な要素になります。

不安や悲しみを抱えている人に対しては、特別な知識よりも、「そばにいること」や「安心して話せる環境」が重要になる場合があります。

① 自分のストレスを和らげる方法

  • 不安や恐怖を一人で抱え込まず、誰かに話す
  • 感情を無理に抑え込まず、率直に表現する
  • 自分だけで解決しようとしすぎない
  • 休息や入浴、軽い運動などで気分転換を行う
  • 自分のストレス状態を意識する

② 相手を支える関わり方

  • 無理に話を聞き出そうとせず、話し相手になる
  • 安心して感情を表現できる環境を整える
  • 相談しやすい雰囲気をつくる
  • グループでの活動や気分転換を行い、孤立を防ぐ
  • 相手の気持ちを否定せず受け止める
  • 結論を急がず、回復の時間を尊重する

また、「批判すること」「安易に励ますこと」「一方的な助言」などは、かえって相手を追い詰めてしまう場合があります。一緒に食事をする、散歩をするなど、日常生活を共に過ごすこと自体が、心理的支援になることもあります。

※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』を参考に、一般の方にも分かりやすく再構成したものです。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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