防災訓練はなぜ必要なのか
地域の防災力を高めるためには、知識を得るだけでなく、実際に体験しながら「災害時に動ける力」を身につけることが重要です。
防災訓練には、地図を使って危険箇所を確認する訓練や、避難所運営を体験する訓練、応急手当や救出活動を学ぶ実技訓練など、さまざまな種類があります。
災害発生時は、想定外の出来事が同時に発生し、冷静な判断が難しくなることがあります。そのため、避難行動や応急手当、避難所運営などを事前に体験しておくことで、いざという時に落ち着いて行動しやすくなります。
また、防災訓練は地域住民同士が顔の見える関係を築く機会にもなります。日頃から地域で協力する体制を作っておくことは、災害時の共助につながります。
ここでは、代表的な防災訓練の種類と、それぞれの目的や特徴について解説します。
地域の「危険」を可視化する:災害図上訓練(DIG)
DIG(Disaster Imagination Game)は、地図を使いながら地域の災害リスクを確認するワークショップ形式の防災訓練です。
参加者同士で地域の危険箇所や避難経路を共有することで、「自分たちの地域で災害が起きたらどう行動するか」を具体的に考えることができます。
主な実施内容
- 地図上に市役所・警察・消防・避難所などの重要施設を書き込む
- ハザードマップを参考に、浸水想定区域や土砂災害警戒区域を確認する
- 「道路が通行できない場合はどう避難するか」などを参加者同士で話し合う
DIGは防災知識を学ぶだけでなく、地域住民同士が顔の見える関係を築くきっかけにもなります。
「避難所運営」を学ぶ:HUGと机上シミュレーション
避難所を開設した際の混乱を、安全な教室や会議室で疑似体験する訓練です。
避難所運営ゲーム(HUG)
HUG(避難所運営ゲーム)は、避難者の状況が書かれたカードを、体育館に見立てた平面図へ配置していくゲーム形式の訓練です。
高齢者、乳幼児連れ、外国人、ペット同伴者、アレルギーを持つ人など、さまざまな事情を抱えた避難者への対応を考えながら、避難所運営を体験します。一般的には、読み上げ係と運営役に分かれて実施され、限られた空間や資源の中で判断する力を養います。
避難所レイアウトの検討
避難所では、本部、受付、更衣室、救護スペース、ペットスペースなど、多くの機能を限られた空間に配置する必要があります。そのため、実際の学校や施設の図面を使い、どこに何を配置するかを事前に検討する訓練も行われています。
避難所生活ルールの検討
避難生活を維持するためには、共同生活のルールづくりも重要です。
消灯時間、トイレ清掃、電源利用、ゴミ出しなどについて事前に話し合うことで、避難所内の混乱やトラブルを減らすことにつながります。
実際の避難所を使った運営訓練や、高齢者・障害者・外国人対応などを想定した訓練も行われています。
救出・救護の専門訓練
災害時には、公的機関が到着するまでの間、地域住民同士で助け合う「共助」が重要になります。そのため、防災訓練では、応急手当だけでなく、救出活動や搬送方法など、実践的な訓練も行われています。
人が倒れていた時の基本ステップ
人が倒れていた場合は、まず自分自身の安全を確保したうえで、傷病者の状態を確認します。周囲の状況によって対応は異なりますが、基本的な流れは次のとおりです。
- 周囲の安全確認: 二次被害を防ぐため、自分と倒れている人の安全を最優先する。
- 止血の確認: 大出血がある場合は、直ちに圧迫止血を行う。
- 意識の確認: 呼びかけに反応があるか確認する。
- 応援要請: 意識がない場合は周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を依頼する。
- 気道の確保: 呼吸を助けるため、口内の異物除去や、呼吸しやすい姿勢(回復体位など)をとらせる。
心肺蘇生法(CPR)とAED訓練
災害時や日常生活では、突然人が倒れる場面に遭遇する可能性があります。
心停止では、救急車の到着を待つだけでは救命率が大きく低下するため、その場にいる人による初期対応が重要になります。
特に重要なのが、胸骨圧迫を中心とした心肺蘇生法(CPR)とAED(自動体外式除細動器)の使用です。
心肺蘇生法(CPR)やAEDの使用方法は、消防署や救命講習などで定期的に訓練が行われています。実際の災害時や救急現場で適切に行動できるよう、平常時から講習を受講しておくことが重要です。
傷口を清潔なガーゼやハンカチで「直接」強く押さえます。止血帯(縛る方法)は、最後の手段です。
| 症状 | 応急手当の例 |
|---|---|
| 出血 | 清潔な布などで傷口を圧迫する |
| 骨折 | 添え木などで固定する |
| 熱中症 | 涼しい場所へ移動し身体を冷やす |
| やけど | 流水で冷やす |
子どもの場合は、人工呼吸を組み合わせることが推奨されています。
傷病者の搬送
無理な移動は症状を悪化させるため、安全な場所であれば動かさずに救急隊を待ちます。移動が必要な場合は、以下の方法を検討してください。
- 簡易担架: 毛布と2本の丈夫な棒(物干し竿など)で作成。
- 引きずり搬送: 毛布やシーツの上に寝かせ、頭の方から静かに引く。
- 徒手搬送: 複数人で協力し、傷病者の体(特に頭部と背骨)を水平に保つ。
倒壊家屋からの救出訓練
地震による建物倒壊を想定し、救助資機材の使い方や、安全な救出手順を学ぶ訓練です。
主な内容
- 周囲の安全確認
- 要救助者への声かけ
- バールやジャッキを使った救出
- 家具転倒時の救出方法
- 二次災害の防止
また、長時間圧迫された人を無理に救出すると、「クラッシュシンドローム(圧挫症候群)」を引き起こす危険があるため、慎重な対応が必要とされています。
救助活動では、無理に救出を急がず、可能な限り早く救急隊へ引き継ぐことが重要です。
- 励まし続け、意識を確認する
- 可能な限り水分を摂らせる(意識がある場合)
- 救急隊や医師に「挟まれていた時間」を正確に伝える
車両事故を想定した救出訓練
地域によっては、車両事故や土砂災害などを想定した救出訓練も行われています。
訓練では、車内へ閉じ込められた人の救出や、周囲の安全確認、傷病者の搬送方法などを学びます。
実際の災害現場では二次災害の危険もあるため、救助活動は安全確保を最優先に行うことが重要です。
防災訓練へ参加するときのポイント
防災訓練の効果を高めるためには、ただ参加するだけでなく、日頃の備えと結び付けて考えることが大切です。
- ハザードマップを確認してから参加する
- 家族で参加して避難場所を確認する
- 実際の避難経路を歩いてみる
- 訓練後に気づいた課題を話し合う
- 一度だけでなく継続的に参加する
防災訓練は、一度参加しただけで十分というものではありません。
災害対応の知識や技能は、時間が経つと忘れてしまうことがあります。また、家族構成や地域環境の変化によって、必要な備えや避難行動も変わります。
そのため、防災訓練には継続的に参加し、定期的に避難経路や備蓄、防災計画を見直すことが大切です。
防災訓練は、自治体や自主防災組織、消防署、学校などが実施しています。広報紙や自治体ホームページ、防災アプリなどで募集情報を確認し、地域で開催される訓練へ積極的に参加してみましょう。
まとめ
防災訓練は、災害時に必要な知識や技術を学ぶだけでなく、実際に行動できる力を身につけるための重要な取り組みです。DIGやHUG、応急救護訓練などを通じて、自分自身や家族、地域を守るための備えを確認できます。
災害はいつ発生するかわかりません。地域の防災訓練へ積極的に参加し、日頃から「いざという時に動ける力」を育てておきましょう。
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※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』などを参考に、当サイトの視点で再構成・解説しています。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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