噴火現象による災害
火山噴火の起こり方や規模にはさまざまな種類があり、それに応じて発生する災害の内容や被害の大きさも大きく異なります。
火山噴火にともなって火山から放出されるものには、火山灰や火山レキなどの固体の噴出物(火砕物)、高温のマグマが斜面を流れ下る溶岩流、そして気体として放出される火山ガスなどがあります。これらはいずれも、人の命や生活に深刻な影響を与える要因となります。
また、噴火によって降り積もった火山灰や火砕物が、雨などをきっかけに土石流を引き起こすと、噴火そのものが収まった後でも被害が発生する「二次災害」となることがあります。
こうした多様な火山災害から生命や財産を守るためには、噴火現象ごとの特徴を理解し、それぞれに対応したハザードマップの整備や、具体的な避難計画をあらかじめ作成しておくことが重要です。
火砕物による災害
火口から放出される噴出物は、その大きさによって次のように分類されます。
・直径2mmより小さいものを火山灰
・直径2mm~64mmのものを火山レキ
・直径64mmより大きいものを火山岩塊
また、気象庁の発表などでは「火山灰」と「噴石」という区分も使われています。
噴石とは、人に当たるとけがをするおそれのある大きさ以上の噴出物のことです。
小さな噴石は噴煙とともに高く舞い上がり、風に流されて、条件によっては10km以上離れた場所に落下することがあります。
一方、火山岩塊は空気抵抗をあまり受けないため、非常に速いスピードで火口から飛び出します。到達距離は一般的に4km以内とされていますが、火口周辺では非常に危険です。
火山灰や火山レキは、噴煙として上空に吹き上げられた後、風によって運ばれて地表に降り積もります。重いものほど火口付近に、軽いものほど遠くまで運ばれるのが特徴です。
現代社会において特に深刻なのが、火山灰による被害です。
火山灰は、電線に積もると停電の原因となり、農作物に降り積もると枯れてしまうことがあります。さらに、雨で水を含むと急激に重くなり、屋根に大量に積もると建物が倒壊する危険もあります。
交通機関への影響も大きく、航空機が火山灰を吸い込むと、エンジン内部で灰が溶けて故障を引き起こすことがあります。鉄道では、レール上にわずか0.5mm程度の火山灰が積もるだけで運行停止となる場合があります。
自動車も、数cmの積灰で走行が困難になり、視界不良や低速運転によって大規模な渋滞が発生することがあります。また、降灰によって電線や水道設備に影響が出ると、停電や断水が発生することもあります。
溶岩流による災害
溶岩流は、火口から流れ出した高温のマグマが、火山の斜面を低い場所へ向かって流れ下る現象です。マグマの温度はおよそ900~1200℃にも達するため、通過した森林や建物は焼失し、場合によっては集落が埋没することもあります。
日本では、1983年の三宅島噴火で、阿古地区の集落が溶岩流によって埋没しました。
溶岩流は流れる速度が比較的遅いことが多いため、早めの避難によって人的被害を防げる可能性があります。しかし、進路上にある建物や土地への被害を避けることは難しい災害です。
過去には、溶岩流を止めるために海水をかける試みも行われましたが、はっきりとした効果は確認されませんでした。近年では、溶岩の進行方向に誘導路を掘削し、流れを変える取り組みも行われています。
火砕流・火砕サージによる災害
火砕流は、高温の火山ガスと火山灰、岩石の混合物が、火山の斜面を非常に速い速度で流れ下る現象です。内部の温度は数百℃以上、流下速度は時速100kmを超えることもあり、発生すると逃げることはほぼ不可能です。
火砕サージは、火砕流の周囲や先端に広がる熱風状の流れで、岩石の量は少ないものの、温度や速度は火砕流とほぼ同じです。火砕流や火砕サージが通過した場所では、建物や樹木、人を含め、すべてが破壊され、生存は極めて困難です。
1991年の雲仙普賢岳噴火では、溶岩ドームの崩落によって火砕流が頻発し、6月3日には43人の犠牲者を出す大惨事となりました。なお、水蒸気噴火などでは、比較的温度の低い火砕流が発生することがあり、これを低温火砕流と呼ぶ場合があります。
山体崩壊・津波による災害
火山は、火山灰や火砕物が積み重なってできているため、地盤がもろく、崩れやすい特徴があります。噴火や地震をきっかけに山体が崩壊すると、岩屑なだれや土石流が発生し、広い範囲に甚大な被害をもたらします。
1792年の雲仙普賢岳噴火では、眉山の崩壊によって有明海に大量の土砂が流れ込み、大津波が発生しました。この災害では、対岸地域も含めて1万5000人以上の犠牲者が出ており、「島原大変肥後迷惑」として知られています。
火山噴火による津波は、地震による津波と比べて予測や警報が難しいとされています。
そのため、海沿いの火山で活動が活発になっている場合は、沿岸部でも注意が必要です。
土石流(火山泥流・ラハール)による災害
噴火で降り積もった火山灰は水を通しにくく、雨が降ると一気に水と混ざって流れ出し、土石流を引き起こします。また、火山周辺の雪や氷が、噴出物の熱によって溶けて発生するものは「融雪型火山泥流」と呼ばれます。土石流は時速100km近い速度で流れることもあり、火砕流と並んで非常に危険な災害です。
雲仙普賢岳や三宅島では、噴火後も長期間にわたって土石流被害が続き、多くの住宅が被害を受けました。
火山ガスによる災害
火山ガスの多くは水蒸気ですが、二酸化硫黄や硫化水素などの有害なガスも含まれています。
これらのガスは空気より重く、谷やくぼ地にたまりやすいため、気づかないうちに被害を受ける危険があります。高濃度の火山ガスを吸い込むと、呼吸困難や意識障害を引き起こすこともあります。
2000年の三宅島噴火では、大量の二酸化硫黄が長期間放出され、全島避難が行われ、住民が帰島できるまで4年以上かかりました。
火山地域では、立入規制や気象庁・自治体の情報を確認し、危険区域に近づかないことが重要です。
ハザードマップ
火山噴火による被害を減らすため、噴火現象ごとの影響範囲を地図上に示したものを「火山ハザードマップ」といいます。さらに、避難所や避難経路などを加えたものは「火山防災マップ」と呼ばれます。
火山災害では、噴火が始まってから避難しようとしても間に合わない場合があります。
そのため、事前に危険区域や避難場所を確認しておくことが重要です。
日本では、1980年代以降の噴火災害をきっかけに、各地で火山ハザードマップの整備が進められてきました。特に、2000年の有珠山噴火では、事前に配布されていたハザードマップや住民参加型の防災学習が活用され、迅速な避難につながりました。これは、人的被害を出さなかった世界的な減災の成功例として評価されています。
また、火山活動や調査によって新しい危険区域が判明することもあるため、ハザードマップは継続的に見直しや更新が行われています。
日頃から最新の情報を確認しておくことが、火山災害から身を守る第一歩となります。
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※ 本ページは、日本防災士機構発行の『防災士教本(2025年度版)』を参考に、一般の方にも分かりやすく再構成したものです。
※ 掲載情報は細心の注意を払っておりますが、実際の災害時の判断や行動は、お住まいの地域や状況によって異なります。必ず内閣府や気象庁、自治体などの公的機関から発表される最新情報を優先してください。
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